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あの日に囚われる(1)
忘れもしない。
華やかで成功を約束されていた俺の人生が壊れた日。
その日は、天気予報通りに午後から下り坂で、ゆっくりと灰色の雲が空を覆っていき、夕方には今にも泣き出しそうな空模様となっていた。
「おーい、河井!久し振りに合コンだぜ。
俺達今から繰り出すぞ!お前も来いよ。」
「悪りぃ。最近ちょっとダルいし今日は止めとくわ。
また今度誘ってくれ。」
「おう、わかった!
カワイコちゃんとお知り合いになっても紹介してやらねぇからな!」
「期待し過ぎて撃沈するなよ。」
珍しいことに急ぎの仕事もない週末で、そんな天気にも関わらず出会いを求めてヤル気満々の同僚の誘いを断り定時で上がった。
部屋に着いた途端に、春を告げる雷と共に降り出した雨が窓ガラスを叩き出した。
「…ずぶ濡れになる前でよかったよ…」
思わず漏れるひとり言。
ジャケットをハンガーラックに掛け、ネクタイを緩めながらバスルームへ直行した。
小ざっぱりとした身体をソファーに沈めると、郵便の束を確認する。
いつもながらのチラシをゴミ箱に振り分け、その中から目に止まった薄い水色の封筒。
「…あぁ、この間の検査の結果か。
どうせ血圧が高いとかコレステロールがどうとか、そのくらいのことだろう。」
びりびりと封を破り、中から取り出した紙には……
「…検査の結果、あなたの第二次性は……
は?Ω?
…何言ってんだ?俺は正真正銘のαだぞ!?」
でも、何度見直してもそこに踊る文字は『Ω』。
「一体どういうことなんだ!?
検体の間違えなんじゃないか!?」
慌ててそこに書かれている電話番号をタップした。
…が、『本日の業務は終了しました』という無機質なアナウンスが繰り返されるだけだった。
ありえない。
どうしてだ?
俺は混乱しながらも、即座に頭に浮かんだ医者である親友の川上に電話をした。
早く、早く出ろ!
僅か数コールに苛立ちが募る。
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