あの日に囚われる(1)

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「お前、何か食ったのか?」 「いや…そんなどころじゃなくって…」 「どんな時でも飯は食え。何か口に入れろ。 冷蔵庫に何かあるか?お前自炊するから大抵のもんあるだろ? 勝手に触るぞ。」 川上は、有無を言わさず冷蔵庫の扉を開け、幾つか食材を取り出すと 「炒飯でいいな?すぐ作るから待ってろ。」 タンタン、ザクザクと小気味のいい音が聞こえ、その内に炒めたいい匂いがしてきた。 そうだ。コイツの作る炒飯は美味かったんだよな。 くぅ、と腹が鳴る音が聞こえた。 こんな時にでも…腹は減るのか。 何だかおかしくなってきた。 「ほら、できたぞ。テーブルに運んでくれ。 俺もまだだから一緒に食わせろ。」 「ありがとう。」 素直に礼を告げ、言われる通りに皿を運んでコップやスプーンをセットした。 ワカメスープまで作ってやんの。 「いただきます!」 声に出せば止めどなく愚痴やら不安な気持ちやらが噴き出しそうで、俺は無言で食べ進めた。 川上は、何か言いたげだったが言葉を発しない。 俺の様子を観察していたのかもしれない。 「…ご馳走様でした。 すっげぇ美味かった。ありがとう。」 「…少しは落ち着いたか?……あぁ、そうだろうな。これ、先に片付けてくる。」 無言で首を横に振った俺の頭をぽんぽんと撫でた川上は、「座ってろ」とひと言告げて手際良く洗い物をし始めた。 その行為と言葉に何故か俺は逆らえなくて、川上の姿をぼんやりと眺めていた。 手早く片付けを終えた川上が俺の前に座った。 「で?書類は?」 心拍数が跳ね上がる。 黙って封筒を差し出した。 その手は少し震えていたと思う。 川上はそれを受け取り目を通すと 「書面通り…二次性が変わった、ってことだ。」 「…再検査は!?きちんとそれ用の検査をすれば間違いだってわかるだろ?」 「人生を分ける二次性検査には二重三重のチェックが入る。 どうしてもと言うならできるが…結果に期待はするな。」 「え?」 「期待するな、と言ったんだ。」
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