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「何だよそれ…何冗談言ってんの?
検査する前から『期待するな』って…
それじゃあ、まるで俺が完全なΩだって言ってるようなもんじゃん…」
川上は無言で俺を見つめている。
あぁ、そうか…それが答えか……
「嘘だろ!?
俺、今までずっとαだったんだぜ!?
何で突然こんな…Ωなんかに…あり得ない…
そんなこと信じられない…」
「河井…」
「なぁ、川上!どうしたらいいんだ?
こんなタチの悪い冗談…なぁ、頼む。
嘘だと言ってくれよっ!なぁ!」
川上は、泣きながら掴みかかって両肩を揺さぶる俺のなすがままになっていた。
感情が昂って、終いには川上に縋り付いて号泣していた。
川上は…そんな俺を抱きとめ
「河井…どんな慰めの言葉も、今のお前の足しにはならないと思う。
否定してやりたくても、これは現実だ。
受け止めるしかない。
Ωだって世の中でバリバリ働いている人だって大勢いる。
うちの病院にも、何人もΩの医者がいるぞ。
お前なら二次性なんて関係なく、今まで通り、いや今以上に活躍するよ。
だが現実問題、数カ月のうちにヒートもやってくるだろう。
処方箋も俺が書いてやる。
…今夜は泣きたいだけ泣けよ。
俺が付き合ってやるから。」
何を言われても耳に残らない。
ただ、言葉の羅列が通り過ぎて行くだけ。
俺は川上にしがみ付き、抱きしめられ、子供のように泣くことしかできなかった。
その時…その行為を『嫌だ』と思わない自分に気付く余裕すらなかった。
俺がΩ!?
悪い夢なら今すぐに覚めてほしい。
この俺にヒートだなんて…発情期に入ったΩの淫らさは嫌と言うほど見聞きしている。
俺の脳裏に、狂ったように俺を求めて乱れ狂っていた、かつての恋人達の姿が浮かんだ。
あんな浅ましい姿に、この俺が!?
あり得ない、絶対にあり得ない。
嫌だ!あんな風になるなら死んだ方がマシだ!
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