コーラとミルク

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コーラとミルク

彼女と別れた あんなにも愛していたのに 僕は最低な男だ 電話で一方的に別れを告げ、連絡先を消した 写真も動画も全て消した 嬉しかった、楽しかった、幸せだった 自分から別れたくせに涙が止まらなかった こんな時、綺麗な思い出だけが蘇ってくる 全部忘れたいのに バイト先の先輩だった。お互い何となく惹かれあってたのは察してた。告白したのは僕からだった。 年上なのに子供みたいにはしゃぐ彼女が、可愛かった。 初めてのデートで驚いたのは彼女がコーラと牛乳を 混ぜて飲んでいる事だった。 「君も美味しいから飲みなよー!みんな損してるよー」 「こんなの飲めないよ」 あまりに美味しそうに飲むから騙されてしまった。 炭酸の気泡が牛乳特有の匂いを際立たせる。 「すごい顔してるー写真撮ろ!」 笑う彼女、やっぱりかわいいな。 何度目かのデート、その日はクリスマスだった。 僕はサプライズでプレゼントを用意していた。 彼女のはしゃぐ姿を想像するとつい表情が緩んでしまう。そして彼女の家での食事後、プレゼント渡した。 しかし全く予想外の反応だった 「ごめんね。私、宗教上の理由でクリスマスプレゼントとか貰えないんだ。これは君からのプレゼントとして貰っておくね。」 それから彼女はその宗教について熱心に話し始めた。普段の子供っぽさは消え何かに取り憑かれているかのようだった。 その姿は少し怖くも美しかった。 その日を境に彼女は少しづつ宗教へと誘うようになっていった。 同じ団体の人に会わせたり、パンフレットを渡されたり、遂には集まりがあるから行こう言ってきた。 僕は次第にストレスに感じていたのかもしれない。 それでも彼女との時間はとても幸せなものだった。 だから別れるなんて事は考えていなかった。 「別れなさい。」 母親から突然言われた。 ちょうど帰省中だった僕に何の前触れも無く言ってきた。 嫌だった僕は当然、母親と口論になった。 2、3日この調子だったが疲労と共に弱っていった方は僕だった。 彼女の事は愛していた。でもあの話をしている時だけは、嫌いだったかもしれない。無意識にそんな事を思っていたと思うととても悲しくなってきた。 テーマパークで子供以上にはしゃぐ彼女、ご飯を美味しそうに食べる彼女、寂しいと手を握る力が強くなる彼女。 でもやっぱり愛していた。 これから僕がやるべき事は… 一通のメール。そうか…メールは送ってこれるのか。 「さっきは、しつこくしてごめんね。  君が決めた事だもん。私も前を向くね!  楽しい思い出沢山くれてありがとう。  体に気をつけてこれからも頑張ってね!  あとコーラミルクは美味しいから!笑」 合わないものは合わないんだよ。 でもせめて僕だけでもなんで分かってあげられなかったんだろう。 僕が飲んだらまた笑ってくれるかな 今君はメール画面見てきっと泣いているよね 自分勝手で本当にごめんね。 泣かないで、君には笑っていて欲しいんだ。 僕の頭に綺麗だった思い出が流れてくる。 僕達はもう混ざる事はないのかな。 君がこの先幸せになりますように。 罪滅ぼしとも言うべきか、僕はずっと祈った。 喉が渇いた。 冷蔵庫からコーラと牛乳を出して半分づつ割って 飲んだ …意外と嫌いじゃないかも? 時間が経つ事に人は、何から何まで変わっていく 僕は君を愛していた。でも君が分からなかった。 いつか君を全て分かる時が来たらいいな。 そして僕はメールを開きやっとメッセージを送った。 「まずいよ。」
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