客待つ俺

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 13:00  開店から2時間経過。 「私、今日はもう帰るね。どうせ、今日の夕飯は残っている麺や具を使っての、のんちゃん特製のラーメンでしょう・・・」 「キエちゃん。もう、帰るの?お客さん来たらどうするの?」 「そもそも・・・。今日オープンするという広告、チラシの手配はした?」 「うん!今朝した!向こうは渋っていたけど・・・」  女の名前はキエちゃん。 「今朝?朝刊に入れてもらうのに今朝?だから、誰も知らないんだよ」 「えっ?!だって、直前になったら連絡をくださいって・・・。違うの?」 「日本はそれで間に合うの?私の国では、前日だよ」 「えっ!えぇっ!!」  キエちゃんはエプロンを脱ぐと、テーブルの上に置いておいた布巾を流しに放り、「ちゃんと、家族4人が食べれる分だけ、持って帰って来てね」と言って、店を出て行こうとする。 「待って!キエちゃん・・・」 「私、日本語わかりません!」  キエちゃんは笑顔で手を振ると、店の前に停めていた自転車に乗って帰った。
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