うちのアイちゃんが言うことには

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うちのアイちゃんが言うことには

 アイちゃんは、優秀。 「ユナ様、おはようございます」  毎朝六時半にわたしを起こしてくれるから安心。 「朝晩の寒暖差が十四度です。半袖のブラウスに薄手のカーディガンを羽織りましょう」  アイちゃんは音声で生活をサポートしてくれる心強いAIだ。 「卵と柔軟剤が切れています。注文しますか」 「お願い」  わたしは身支度する手を止めない。アイちゃんは何でもしてくれる。日用品の補充、エステやヘアサロンの予約、それから。 「山本様への誕生日プレゼントの候補リストを作成しました。モバイルへ転送します」 「ありがとう」  金のピアスを着け終えて、窓際の円筒状のアイちゃんを見つめる。 「プロポーズの返事どうしよう。わたし、東さんのほうが」 「山本様の方が生涯年収が高いと予測されます。それに、飲酒や喫煙の習慣がないので病気のリスクが低いです。暴力的ではありませんし、近親者や会社での交遊関係も良好です」 「それは、そうだろうけど」 「東様はAIを保持していません。不確定要素が多すぎて未来予測が不能です」  わたしは言い返せずに、ブラウスのボウタイを結ぶ。  東さんは、AIを持たない。何でも自分で決められるからだ。下調べなしだから、一緒にいると何に出くわすか分からないドキドキ感がある。  もっともAIが管理しないせいか、散髪の間隔は驚くほど長いし、時々襟のヨレたジャケットを着てくることもある。 「山本様には無駄もミスもありません」  務め先にしても、東さんは探偵事務所。対する山本さんは外資系商社。 「東さんね、仕事を自分で探して見つけたのよ。探偵事務所なんて面白いよね」 「面白さを最優先するのは、ハイリスクですよ、ユナ様」  アイちゃんがきらりと点滅した。 「これまでのわたくしの働きをご存知のユナ様ならば、正解がお分かりのはず」  そうね最近は国会や憲法の審議にも使われているくらいだもの。アイちゃんは正しいのだ。 「いってらっしゃいませ」  うん、とわたしはうなずく。
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