レストランスミレ

1/1
前へ
/19ページ
次へ

レストランスミレ

「レストランスミレ」では周りにいるお客様も一緒にダンスをしながら春彦と愛二人の事を祝福していた。 春彦はとても幸せだった。 自分の理想の彼女と結婚できるのだから……。 プロポーズも上手くいった喜びで一杯だった。 こんなに長い間……高校生の時からずっと付き合っている恋人同士なんてそうそういない。 仲良くやってこれたこれはきっと運命なんだ……。僕が探し求めていた理想の彼女。。。 その時一人の従業員が言った。 「そろそろ閉店ですので~」 春彦と愛は「わかりました。皆さん今日はありがとうございました。じゃあ愛、僕はお金を払ってくるから出口の外で待っていて」 そう愛に伝えた。 愛は「わかったわ」そう言って店の外に出ようとした。その時だった……。 店のキッチンから爆発した音がした。 「ドカン ドカン……」 そして、店の中はあっと言う間に煙で充満してし まった。煙で前が見えなくなってしまった春彦は 店の中にまだいる愛を探していた。 「愛~愛~何処にいるんだ?大丈夫か?」 春彦は口元をハンカチで押さえ、むせながら  できる限りの声で「愛~愛~」と叫んだ。 そんな時、春彦に一人の従業員が声を掛けた。 「御客様、お連れの方は私が捜して外に連れ出すので御客様は先にホテルの外に避難していて下さい」 春彦は、その従業員の白い制服と名札のレストランスミレの文字しか煙で見えなかった。 そして春彦は、煙で目もあまり開けられず目が充血して涙が出ていたそれでも春彦は、従業員に言われた通り先にホテルの外に避難した。 そこには、沢山ホテルの外に避難している人がいたが、愛の姿はなかった。愛~どうしたんだろう? 大丈夫なのか?まだ避難してないようだけど~。 春彦は愛の事を心配していた。従業員の方がきっと探してくれてるそう信じて。 その頃愛は、煙が酷くてむせながらテーブルの下にたった一人、口元をハンカチで押さえながら震えていた。まるで怯えた子犬のように~愛は震えが止まらなかった。 従業員の一人がテーブルの下で怯えている愛を発見して声を掛けた。 「御客様~ここにいたんですねさあ、私と一緒に 外に出ましょう」そう言って従業員は愛に優しく 手を差し伸べた。  「さあ、しっかり私の手に捕まってくださいね」 愛は「ありがとうございます」 そう言ってレストランの従業員の手をしっかりと 握った。 そして、煙の中愛と従業員はレストランの外に 出た。愛と一緒に外に出た従業員は、 煙が外に出ないようにレストランの扉を閉めた。 愛はレストランの従業員にお礼を言うつもりだった。「今日はありが……」その時、従業員はレストランスミレのドアをしっかりと閉めた事を確認して愛の方を振り向いた。愛は愕然とした。 「あ、あなたは、いつも私と春彦をじっと見ている……。黒づくめのお、と、こ……。ここで~ わ、た、しを殺すの?」愛は男にそう尋ねた。 男は言った。「黒づくめの男~そう呼んでるのか~」男は笑った。 「何、笑ってるの?私達を何も言わずにじっと見ていて何がおかしいの?私達に恨みでも~あなたの その制服、このレストランで働いてるの?あなたは誰なの?」 愛は震えながら言葉を振り絞って男に聞いた。 男は言った。 「私は、田名部愛さんあなたの味方です。 そして、私は殺し屋……依頼人は田名部愛さんの恋人の横田春彦さんを殺してほしいと依頼したのです。たぶんもうすぐプロポーズされるからと……」 田名部愛は言った。 「そ、そんな……春彦を殺してほしいと依頼したのは誰何ですか?」 黒ずくめの男は田名部愛に言った。 「それは~あなたのご両親ですよ」 「えっ?な、何で私の父と母が?」 田名部愛は何を言っているの?聞き間違え? 頭が真っ白になっていた。 男は言った。 「田名部愛さんあなたもわかってるんじゃないんですか?本当は横田春彦さんと別れたいと思って  いたんじゃないんですか?」 「そ、そんな事ない。私は高校生の頃から女の子に人気があった春彦が好きだった。やっと彼と付き合う事ができたの。いろんな女性が彼の側に来たのに彼は私を選んでくれたの……だから、私はプロポーズされて嬉しいの」 男は田名部愛に言った。 「愛さん本当はすぐにキレて怒鳴り付けてくる。 彼の思い通りに動かないとすぐキレる彼に合わせるのが疲れたんじゃないんですか? それに、あなたは週末のカフェやパン屋巡りを具合いが悪い時でも彼に付き合っていた……。 今日は体調か悪いからデートは出来ない。 そう言っても、電話口で怒鳴り付けられ、 じゃあお前とはもう付き合わない別の女探す。 そう言われてたんじゃないんですか?だから田名部愛さん~あなたはどんなに体調が悪くても週末は 必ずデートしなければいけない彼の機嫌を損ねないように、違いますか? そして、あなたは彼に別れ話を何度もして別れようとしている……。 ところが彼は、あなたが別れ話をする度にあなたに怒鳴り付けてくるから怖くてあなたは彼と別れる事ができなかった。違いますか?」 愛は男に言った。「違う、違う、そんなはずない。私は春彦を愛しているの!プロポーズされて嬉しいの。この間も家で春彦を待っている時、まるで初めてのデートみたいにドキドキしたわ」 男は言った。「ドキドキですか~それは恐怖でドキドキしているだけですよ。 もう一度考えて見てください。 これ、私の名刺です。何故?私がこのような煙を仕掛けたのか?田名部愛さんに詳しく教えておこうと思いまして。それからじゃないと仕事が出来ませんからね。そうだ~今度の土曜日19時にここに来てください。それまでには田名部愛さん~あなたも彼の怖さを思い出して下さい。 あと、依頼主さんにはまだ、黙っておいて下さい。 依頼主さんの事をベラベラと喋りすぎました。 対象者様に喋ってはいけない事になっていますので」 愛は「わかりました。急がないと春彦が心配してる」 愛は急いでホテルの外に出た。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加