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第1章 転生 #1 マキリクト 2023/01/27
国道26号線から2号線に向かうフェニックス通りは、大渋滞によって、一向に前へと進まない。
苛立ちを演出するクラクションが至る車から発せられ、中には窓から身を乗り出し、前の車に罵声を浴びせる輩までいる。
目の前の交差点の真上に高速道の高架があり、一台の車が遮音壁を突き破り、フロント部分だけが顔を出した状態で止まっている。
真木陸斗はハンドルに覆いかぶさるように前のめりになり、スマートフォンを弄っている。
「くっそ!全然つながらん!なんなんだよ!」
使えないスマートフォンに悪態を付き、助手席に投げ出す。
「あいつら、ちゃんと逃げてっかな・・無事であってくれよ・・」
2023年1月27日、西日本は未曾有の大災害に見舞われた。
特に、大阪、奈良、和歌山は最大震度M9を記録する地震によって、都市が崩壊した。
「逃げろー!早く逃げろー!津波だーーー!」
後方から、車の間を縫って先頭を走る男が、津波の襲来を告げる。
バックミラー越しに後方を見やると、大勢の人々が我先にと、走り出している。
「マジか!もう来たのかよ!!」
急いでドアを開け、車の外に躍り出るが、結果ドアによって押し寄せる人々を堰止め、真木自身がもみくちゃにされ、立ち上がることすら出来なくなってしまう。
自分に覆いかぶさっている女性を引き剥がし、なんとか立ち上がるも、既に足元には黒々とした水が路面を濡らし出していた。
周りを見渡すと、交差点の先、左奥側に大きな白い建物、真左の先には高速道の入り口が見える。
意を決し、高速道の入り口を目指そうと踏み出した時、足元の女性がしがみ付いてきた。
「助けて、助けてぇ~・・」
女性は若そうではあるが、でっぷりと肥えた身体をし、自身で立ち上がる事が出来ず、既に全身がずぶ濡れになっている。
「助けるたって・・あ、オイ!アンタ手伝ってくれ!」
車の反対側を走り抜けようとする若者に助けを求めるが
「ウルセー!!早く逃げろ!!」
一瞥をくれてから、走り去っていく。
「どうしろっていうんだよ・・オイ立てるか?」
太った女の両脇に手を入れ、立たそうとするが、重すぎて持ち上がらない。
「アンタ太り過ぎだ!俺の肩掴めるか?抱き起すからよ!」
女に悪態を付きつつ、陸斗も人のこと言えないかと、不摂生で作り上げた太鼓腹を気持ち引っ込める。
来月で45歳になる陸斗は、身体こそ鍛えてはいるが、いくつになっても若者が好みそうな食事が大好きで、しかも大食漢だ。
丸っこいボディになるのも否めない。
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