1 ナンバーワンホストは末席ホストになすがまま

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 今日は大きな一仕事が終わった。遊生輝はオリュンポスのロビーのベンチに腰掛けて疲れを取っていた。ただ、目の前のベンチが目に付き座っただけである。ロビーであるが、建物を支える訳でもないのにエンタシスの柱がいくつも建てられている。店のオーナーのギリシャ神話好きからくる趣味の設計である。更に言うなら『オリュンポス』と言う店名も、ギリシャ神話にて神々が住まう山である『オリュンポス山』に肖って付けたものである。更に拘りはあり、このオリュンポスに在籍するホストは50人、売上の上位12人を『オリュンポス十二神』とし、毎月特別ボーナスを支給する程である。遊生輝はこの第一席をこの三年間キープし続けている。ただ、安定して順位を守っているのは第六席以上で、それ以下は常に順位の入れ変わりが激しい。 遊生輝がベンチでぐったりとしていると、その横にあるトイレの入り口が目に入った。その入口脇にバケツとモップがそのまま置かれているのである。そして、その脇を女性客が通り過ぎていく。 「全く……」 遊生輝はスッとベンチから立ち上がり、慌ててバックヤードに戻っていった。バックヤードには指名がない新人ホストが数人お茶を引いて待機状態でまっていた。遊生輝はそんなホストの一人を捕まえて尋ねた。 「おい、今日のトイレ掃除は誰だ?」 皆、一斉に首を振る。すると、バックヤードの隅に座っていた一人のホストが遊生輝に近づいてきた。 「あの、今日は自分ですが」 そのホストはまだ入店一ヶ月の新人ホストの『水輝(みずき)』こと『鷲野充流(わしの みつる)』元は一流企業のサラリーマンだったのだが、事情があり退職。日雇い仕事で訪れた新宿歌舞伎町にいたところを遊生輝と偶然に遭遇。遊生輝は充流の小柄な外見と整った顔にインスピレーションを感じ即座にスカウト。充流はいきなりのスカウトに戸惑ったが、日雇い仕事の給料よりも遥かに高く、社員寮もあることから追い込まれるような形でオリュンポスに入店したのだった。ちなみに源氏名であるが、遊生輝の天啓の如きインスピレーションで適当に決めたものである。 「なぁ水輝、トイレの前にバケツとモップがそのまま置きっぱなしになってるのを見たらどう思う?」 「え…… いきなり言われても…… 汚い?」 遊生輝は水輝を軽く小突いた。そして、遊生輝は「わからねーのかよ」と言いたげな厳しい目で睨みつける。 「汚いのは当たり前だろ。トイレ掃除に使ったモンだからな? 俺が言いたいのはそう言うことじゃねぇんだよ。ここは『オリュンポス』って名前のホストクラブだ。神々の住まう山って意味の名前なのは知ってるな?」

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