43人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日から私はクラスの中で無視される対象となった。女子の中のリーダー格で、男子の友達も多いチェルシーは、お泊まり会での私の言動や、その他諸々のあることないことを悪口とともに言いふらし、瞬く間に私を孤立させることに成功した。
彼女らは私の容姿や性格や、無意識の癖といった細かい部分を揶揄うようなことを言ったり、廊下ですれ違い様に唾を吐かれたりもした。しまいには、わざわざ私を呼び出して、人種差別的なことを言う人間もいた。私のことを全く知らない人間たちですら攻撃側に回る、そんな状態に当初は大きく戸惑った。親友であったはずのジルは、例によって見て見ぬふりをした。だが私は彼女に何も求めてはいなかった。教師も友人も、私の味方ではないのだと分かっていたから。
最初のうちはもちろん辛かったし、何度も学校を休もうと思った。だが、段々とその状況に慣れて一人でいることが当たり前になると、どうでも良いことに思えてきた。気が合わない人間たちに無視されて悪口を言われたところで、悲しくも寂しくもなんともない。そう思えるようになった。逆に、これまでみたく無理に友人たちに話を合わせ、愛想笑いをしなくて済むことが気楽でもあった。孤立している現状を嘆くよりも、今まで無駄な時間を過ごしていた昼休みに何をしようかということを考えることの方が重要だ。そう自分に言い聞かせ、普通の子供であれば不登校になってしまうような状況をやり過ごした。
休み時間になると、私はパソコン室にこもってヘッドフォンを装着し、図書館から借りたコメディ映画やシェイクスピア等の古典演劇のDVDを見漁った。そのうちに私の関心は自然と演劇へと向いて行った。女優になりたい。そう思った私は、ロンドン一と言われる演劇部のある名門校を受験することに決め、半年後、見事に合格した。
学校に在学している間は、クラスメイトとの熾烈な主役争いに加わることはなく、脇役ばかりを好んで演じていた。そして、学業の傍ら映画や舞台、ドラマのオーディションを端から受け続け、ことごとく落ちまくり、卒業直前に手にしたのが今の役だった。
最初のコメントを投稿しよう!