1.きっかけ~野球とクイズ

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 ものの1分も経たないうちに、らいとと怜布は「内」と表札のある家の前に立っていた。  そのポストの横の木に、凶みくじのように紙が巻いてあった。 「やったぁ!」  2人は喜んで手を打ち合った。 「に行く……に行く……内さん家に行く……ダジャレか、結局」  ぶつくさ言いながら、怜布がその紙をセカセカとほどいた。  すると、そこにはまた筆書きで「ルート変更の盗塁王」と書いてあった。  ゲー、と悲鳴を上げながら、怜布は体育座りになった。 「まだ続くのぉ?」  すぐそうやって感情が100%顔に出る怜布がおかしくて、らいとは笑った。 「ここまで来たんだもん、もうすぐだよ、きっと。え~と盗塁王って一番たくさん盗塁した人のことでしょ? 去年は誰だったんだろ?」 「ヒデキのヒット曲なら全部言えるけど、そんなの知らない。知りたくもない。知らんで結構」 「調べよう」  すっかりやる気がなくなっている怜布を見たら、らいとは自分がやらなくては、という気になった。  足取りの鈍い怜布を家まで引きずっていき、そして信の書斎の本棚の一角をながめた。  そこには信が買い込んだ野球の雑誌や本がズラリと並んでいる。  だが、どれに欲しい答えが書いてあるのかわからない。  あまりに沢山の雑誌が、単行本が、それに新聞記事のスクラップまでどっさりあるのだ。 「もういやっ!」  怜布が本棚に頭突きした。 「泣きマネしてじいちゃんから聞き出してやる」  飛び出していこうとする怜布の襟を、らいとはつかんだ。 「待って」  よく見ると、棚の一角にちょうどノート1冊分が抜けている隙間があったのだ。 「何してるんだ?」  信が入ってきた。  らいとは本棚の隙間を指した。 「これ、ここにあった分は?」 「あれ? ……またじいちゃんが勝手に持ってったかな。オレが作ったノートなのに」  不満げな信を背に顔を見合わせ、らいとと怜布は嬉々とした。  そこに答えがありそうだ。 「じいちゃんは、どこ?」  急激にまたやる気の湧いたらしい怜布が、信のシャツを揺さぶって聞いた。 「店だろ」  信が言い終わるか終わらないかのうちに2人は窓にへばりつき、真下を覗き込んだ。
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