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ものの1分も経たないうちに、らいとと怜布は「内」と表札のある家の前に立っていた。
そのポストの横の木に、凶みくじのように紙が巻いてあった。
「やったぁ!」
2人は喜んで手を打ち合った。
「打ちに行く……内に行く……内さん家に行く……ダジャレか、結局」
ぶつくさ言いながら、怜布がその紙をセカセカとほどいた。
すると、そこにはまた筆書きで「ルート変更の盗塁王」と書いてあった。
ゲー、と悲鳴を上げながら、怜布は体育座りになった。
「まだ続くのぉ?」
すぐそうやって感情が100%顔に出る怜布がおかしくて、らいとは笑った。
「ここまで来たんだもん、もうすぐだよ、きっと。え~と盗塁王って一番たくさん盗塁した人のことでしょ? 去年は誰だったんだろ?」
「ヒデキのヒット曲なら全部言えるけど、そんなの知らない。知りたくもない。知らんで結構」
「調べよう」
すっかりやる気がなくなっている怜布を見たら、らいとは自分がやらなくては、という気になった。
足取りの鈍い怜布を家まで引きずっていき、そして信の書斎の本棚の一角をながめた。
そこには信が買い込んだ野球の雑誌や本がズラリと並んでいる。
だが、どれに欲しい答えが書いてあるのかわからない。
あまりに沢山の雑誌が、単行本が、それに新聞記事のスクラップまでどっさりあるのだ。
「もういやっ!」
怜布が本棚に頭突きした。
「泣きマネしてじいちゃんから聞き出してやる」
飛び出していこうとする怜布の襟を、らいとはつかんだ。
「待って」
よく見ると、棚の一角にちょうどノート1冊分が抜けている隙間があったのだ。
「何してるんだ?」
信が入ってきた。
らいとは本棚の隙間を指した。
「これ、ここにあった分は?」
「あれ? ……またじいちゃんが勝手に持ってったかな。オレが作ったノートなのに」
不満げな信を背に顔を見合わせ、らいとと怜布は嬉々とした。
そこに答えがありそうだ。
「じいちゃんは、どこ?」
急激にまたやる気の湧いたらしい怜布が、信のシャツを揺さぶって聞いた。
「店だろ」
信が言い終わるか終わらないかのうちに2人は窓にへばりつき、真下を覗き込んだ。
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