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今すぐ医者を呼べ!
「頼む…今すぐ腕のいい外科医を呼んでくれ」
チンピラのサトシは舎弟に涙目になりながら言った。サトシはやらかしてしまい、落とし前のため明日小指を落とすことになっていた。
チンピラである以上珍しいことではないが、サトシは小指を失うのが嫌だった。どうしても嫌だった。なので密かに腕のいい外科医を呼んでおいて指を落とした瞬間、緊急手術をしてもらおうと思っていた。
そして次の日、兄貴たちが見守る中、サトシは小指を落とした。
「どうもすみませんでしたぁぁぁ!」
深々と頭を下げ、落とした指を持ち、サトシは舎弟に連れられて医者の元へ。白衣を着た医者はずいぶんと若いあんちゃんだった。やや不安に思いながらサトシは
「先生! 指をくっつけてください。」
と言った。白衣のあんちゃんはビックリしたような顔をして
「え? 無理ですよ」
と言った。
「なんでです? 外科医なんでしょ?」
サトシは食い気味に言う。
「だって、僕まだ研修医ですし…。指の消毒を頼まれただけなんで。しかもそんな大手術、こんな応接室なんかじゃできないっすよ」
え…、消毒?? サトシは舎弟を睨んだ。舎弟はオドオドした。
「兄貴、指の消毒のために医者を呼べと言ったんじゃなかったんですか? まさか落とした指をくっつけようだなんて、俺、思いもしなくて…」
そうしてサトシは小指を失った。
「チクチョー、これからどうやって耳や鼻をほじればいいんだよ!」
「そこっ!?」
長いこと沈黙が続いた。
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