今すぐ医者を呼べ!

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

今すぐ医者を呼べ!

「頼む…今すぐ腕のいい外科医を呼んでくれ」 チンピラのサトシは舎弟に涙目になりながら言った。サトシはやらかしてしまい、落とし前のため明日小指を落とすことになっていた。 チンピラである以上珍しいことではないが、サトシは小指を失うのが嫌だった。どうしても嫌だった。なので密かに腕のいい外科医を呼んでおいて指を落とした瞬間、緊急手術をしてもらおうと思っていた。 そして次の日、兄貴たちが見守る中、サトシは小指を落とした。 「どうもすみませんでしたぁぁぁ!」 深々と頭を下げ、落とした指を持ち、サトシは舎弟に連れられて医者の元へ。白衣を着た医者はずいぶんと若いあんちゃんだった。やや不安に思いながらサトシは 「先生! 指をくっつけてください。」 と言った。白衣のあんちゃんはビックリしたような顔をして 「え? 無理ですよ」 と言った。 「なんでです? 外科医なんでしょ?」 サトシは食い気味に言う。 「だって、僕まだ研修医ですし…。指の消毒を頼まれただけなんで。しかもそんな大手術、こんな応接室なんかじゃできないっすよ」 え…、消毒?? サトシは舎弟を睨んだ。舎弟はオドオドした。 「兄貴、指の消毒のために医者を呼べと言ったんじゃなかったんですか? まさか落とした指をくっつけようだなんて、俺、思いもしなくて…」 そうしてサトシは小指を失った。 「チクチョー、これからどうやって耳や鼻をほじればいいんだよ!」 「そこっ!?」 長いこと沈黙が続いた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!