某、カシマと申します。

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 つられて頭を下げてしまい、仕事柄の癖だということに気付いてうんざりした。 「それでは契約内容の確認をして、さっさと契り済ませちゃいましょ」 「あ、はい」  カシマに促され、正座で向かい合う。 「ではまず、願いを教えてほしいっす。3つまで受け付けられるっす」 「なんだかどっかのランプの精みたい……」 「関係ないっす」 「あ、はい」  願い──1つはもちろん決まっている。 「会社をつぶしてほしい」 「なんでっすか?」 「え?」  それ、聞かれるの?  予想外の返答にどう返すか、しばし悩んで。 「行きたくない、から?」 「なんで?」  予想以上につめてくる。正直あまり話したくないのに。その意思が表情に出ていたのか、カシマは困り顔でひらひらと手の平で空を扇いだ。 「細かく聞かないといけない決まりなんすよお」  悪魔も存外面倒な者らしい。
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