某、カシマと申します。

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 それならば仕方がない、と私は口を開いた。 「陰口、とか……聴きたくない、し……?」  カシマは納得したように、軽く手を合わせた。 「あー、いじめ? パワハラ? そういうやつっすか」  私は頷いて、付け足す。 「だから……あの人達に会いたくないっていうか……」  視線がどんどん下がって、ぼうっと床を見つめていると頭の上から、「優しいっすね」と聞こえた。顔を上げると、カシマがぽかんとした顔でこちらを見ていた。 「優しい……?」 「悪魔呼び出すくらいだから、もっとえげつないこと言う人かと思ってたっす。『会いたくない』で留められる人間に呼び出されたの初めてっす」  まあ、たしかに言われてみれば、悪魔を呼び出すくらいの感情にしては、私の願いは随分と軽い気がする。かといって、これ以上を望む気にはならない。
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