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「隠れても無駄だ。大人しく投降しろ」
淡々とした声が降伏を促す。後がなくなった男はカウンターを飛び超えながらペネトレーターで石を変換し、作り上げた長庚流六角棒手裏剣を追手に向かって逆投げに投擲する。
右手から放たれた鋼鉄の針は真空を射貫き、目にも止まらぬ速さで相対する敵の顔面を捉えた。
勝った。
男がそう確信したのも束の間、追手は頭を左に反らし、それをいとも容易く避ける。獲物を見失った棒手裏剣は硬いコンクリートの壁を穿った。
「玩具はそれで終わりか?『グリッドメーカー』」
追手の男は夜に溶け込むような黒色をしたカワハラ重工業製全天候型特殊合成繊維ジャケットを着込んでいた。その背中にはヨタカを模したロゴデザインが刺繍されている。
ナイトホークス。
それが彼が所属している部隊の名前である。
「クソガキが。公僕ごっこがそんなに楽しいか!」
グリッドメーカーが額に青い血管を浮かばせながら掌のペネトレーターを起動。未だ微動だにもしない相手の顔面目掛けて掌底を繰り出す。
が既にそこには男の顔はなく、突き出した手は絡め取られて、ぬるりと背後に回られてしまう。その技は地面を蹴らず体の軸を前に倒し、一瞬にして相手との間合いを詰める移動術。古武術式縮地法であった。
「おまえに能力を与えたヤツのことを教えろ」
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