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指に強烈な電流が流されたような痛みに苛まれ、ようやくグリッドメーカーは自分の指が折られてしまっていることに気がつく。
グリッドメーカーは思わず地に膝を落とす。しかしナイトホークスの男は、慈悲もなく彼の背中に膝を乗せ更に力が徐々に加えていく。関節がミシミシと嫌な音を立てて軋み始めた。
グリッドメーカーが要注意人物として広く『エクスマキナ』内で手配されていたのは彼の右手に埋め込まれている違法ペネトレーターを電子ドラッグ作成へと転用し、絵画の中にプログラムとして忍ばせ、無辜の民を次々に廃人へと追いやっていたからである。
「いでででっ。へっ。ナイトホークスも堕ちたもんだな。世間知らずの坊ちゃんにこんな危険な仕事をさせるなんて。言っとくが俺は殆ど何も知らねぇからこんなことしても無駄だぞ。いででで」
「なら知っている範囲のことを全て話せ」
グリッドメーカーの話した内容はこうだ。
彼が贔屓している五番街A区12-4の『ヴィクトリア』のカウンター席でいつものように酒を嗜んでいると、隣にこの場に相応しくないスーツ姿の男が隣に座り、突如こう話しかけてきたらしい。『あなたの才能をもっと世間に知らしめる方法を私は知っています』と。
相手は彼が画家として活動していることを既に知っているようだった。
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