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机に肘をついて教師の言葉を聞き流す。
急な集会の話とか、提出物とかがあったら困るから朝のHRだけは意地でも出るようにしてるのに……これじゃあここにいる意味がないなぁ。
「────し、白瀬さん、おはようございます!その……」
「……」
気がついたらHRは終わっていたらしく、1時間目の授業がもう始まっていた。とはいえここは不良ばかりが通う学校。内容を聞いている者も、大人しく自席に座っている者も居ない。
……して、教師も居ない。また自習か。
「…………」
にしてもこの笠田という男、いつも話しかけてくる。返事もできない俺に飽きもせず一年以上も……もの好きな人だ。
……この人、実は俺が万年ぼっちなのが可哀想で見捨てられないでいる優しい人なんじゃない?とか、俺にしてはポジティブに考えてみる。
が、朝の意気込みを思い出し、そんな風に自己暗示をしてはみたが、直ぐには変われる筈もない。もし本当に自己暗示だけで変われるのなら、俺はとっくに変わっていただろう。
大方、彼は『レアモンスター等の珍妙な行動を見たいがために何時間でも何日でも粘れるタイプ』の人種なのだろう。うん、俺なら無理。そして言うまでもなく、この場合のレアモンスターは俺である。
まぁ、所謂珍しいもの見たさに面白半分で声をかけられてるだけ、なんだと言うのは俺でもわかる。
なぜ分かるかというと……
その、なんだ。
……異常に見てくるのだ。
席に座っている俺を見下ろし、ソワソワとしながら何かをオウムのようにペラペラと喋り続ける長身のイケメン。この人もやはり俺の顔が怖いのか何なのか、挙動不審というか……いつも下手に出てくる。
……まぁ、その割には視線に遠慮がないのだが。
あまりの熱烈な視線にフィッと目を逸らしてしまい、ハッとする。 く……しまった。
──っ……だから、俺は今日から変わるんだってば!
俺が視線を逸らしてもペラペラと喋り続けていた彼に、意図して視線を戻す。……やっぱり、彼は俺をまだ見ていた。
もちろんそれが認識できたということは今、俺は彼と目が合っている状態なのだが。
「……」
「し、白瀬さん?」
「…………」
「……どうしたんすか?」
「………………………」
笠田は俺の机の前にしゃがみこむと、顔を覗き込んで来た。
空色の瞳がなんとなく心配そうに揺れて見えるのは……きっと気の所為だと思う。
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