日常

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「…………お、はよ」 挨拶を何とか返してみるがやはり表情が硬い。なんならおはようと言うだけでこんなにも苦戦している自分への羞恥と緊張で、顔を顰めている自覚すらある。 なのに──── 「ッ!!おはようございます!白瀬さんっ」 心底嬉しそうにしているこの男……ちょっと犬みたいに見えた。 他人と目を合わせることに限界だった俺は今度こそ視線を彼から外し、周りに意識を向ける。と…いつもは小さく雑談の声が聞こえるのにそれもなく、静かだった。 ただ、笠田のご機嫌にしゃべる声だけが教室に目立っていたが、暫くすると飽きたのか満足したのか、笠田の声が離れていった。 次第に周りの不良達が話に加わっていき少し賑やかになる。いつもと一緒。彼は俺と違ってフレンドリーなタイプなのだろう、不良達の中でもムードメーカー的な存在のようで、いつもバカ騒ぎをしているイメージがある。 そんな彼の、そしてその友人と思われる彼らの声を聞きながら、俺はじっと意味も無く窓の外を見つめる。 離れて行ってしまった騒がしいそれが、少し寂しいとか感じている自分に困惑しながら。 俺って実は────騒いだりできる友達が欲しいとか、思ってたりするのだろうか?騒がしいの、あんまり好きじゃないと思ってたけど……単に人が多いのが嫌なだけだったのかな。 本とか好きだし、てっきり俺は静かな友達が欲しいんだと思ってたけど……違ったんだろうか。 ……自分でも、よくわからないな。
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