日常

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*** 昼食を買いに1階の購買へ足を進める。 俺は2年で教室はB棟の3階。校舎はA棟とB棟に別れているが各階渡り廊下で行き来できるようになっている。教室の割り当ては地上に向かうにつれて4階から1年、2年、3年となっており、1階は購買や職員室。3年は2階なので、学年が上がるに連れ階段を上がる手間が少なくなっていく仕組みになっている。 一応、特別棟と呼ばれる三つ目の校舎もあるが、そちらは小さいし主に特別教室しかない。……それもこの授業出席率が低い底辺校ではあまり使われることも無い。 ガヤガヤとそこかしこで声がする────。 それは至る所で不良が屯って友達と食事をしているからだろう。全く羨ましいことである。 ……まぁ、俺は例え幼なじみの時雨とでも会食は苦手だけど。ちなみに、その周りに不良であれ一般人であれ、慣れない他人がいる空間はもっと苦手だ。 だって────··· 自分の事を気味悪いとか、怖いとかって、あからさまにビクビクしてる人達を見ながら食べるご飯が、果たして美味しく感じるだろうか……?いや、無い、絶対にない、有り得ない。少なくとも俺は。 『──白瀬さん!』 不意に、いつもキラキラした目で呼んでくる笠田が脳裏に浮かんだ。 ……。 笠田とだったら、美味しく食べられるのかな。 ……俺に怯えた目を向けてこない笠田なら。 今日、挨拶を返したら……笠田は驚いた後、酷く喜んでたっけ。 彼は何があんなに嬉しかったんだろうか────。 俺が喋るのは……別に、無い事じゃない。そりゃ、基本は時雨相手にはなるけど、そこまで珍しくもない。通話だって成立する程度には喋れている。……なんなら通話の方が、目の前に人がいないと言うのが大きいのか、普段より話せているとは思う。 時雨からの着信は俺が教室にいる時……つまり、笠田もいる場で例外なく来るし、俺も大抵その場で電話に出ている。……やっぱり、なんであんなに嬉しそうにしてたのか分からない。 ────笠田……あー、ええと。下の名前は、なんだったか。 落ち着いたダークブラウンの髪。 不良にしては暗色で、何故か俺に敬語……のように聞こえる言葉で話してくる人。 俺に、年中キラキラした目を向けてくる、変わった人。
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