1735人が本棚に入れています
本棚に追加
/241ページ
笠田side────────
いつもは他クラスより少し静かなうちの教室────。
でも、今日は少しガヤガヤとしていた。……HR中だが、今はクラスの連中が静かにする理由である麗人が不在だからだ。
……彼がいる時に限り、うちのクラスは幾分静かになる。
理由は、なにが彼の地雷になのか分からないから。……つまり念の為の措置だ。うちのクラス限定の。
カラカラ────ッ
HRはもう既に始まっていたが、平然と入室し席へ着いた白瀬さん。
彼はその小さな顔や、小柄な割に長い手足でスタイルが良く、単体で見れば本来より背が高く見える。相変わらずの冷たい顔立ち、シャツまで真っ黒なうちの学ランを正しく着こなしていた。
うちの学校では殆どの生徒が制服を気崩しまくっており、凡そ『制服を着ている』と言える人間は少ない為、見る度に新鮮な気持ちになる。
にしても、彼が朝のHRに遅れるなんて珍しい。
……というか少し機嫌が悪そうだ。遅れたことと関係があるのだろうか?
「……おい笠田、お前今日は朝の挨拶いーのかよ」
「いや、おま……流石にあれは無理だろ……!」
机に肘をつき、教師のいる方を向いているのに、どこか遠くを見つめるような冷たく虚ろな目。
彼こそこのクラスの麗人────白瀬 スグリさん。
他校生が言い始めたという、『夜校の悪魔』と称される人である。
病的なまでに白い肌、艶のある黒髪。毒々しいほどに真っ赤な双眸は、ルビーのように深いのに、光に当たると鮮やかで……
─────引き寄せられるのに、決して触れてはならないような怪しさがある。
作り物めいた顔立ちは巧妙な人形のようで、大きな瞳に小さな鼻、薄い唇。冷たく見えるのは元々の顔立ちのせいか、それとも滲み出る危険な雰囲気のせいか……
どちらにせよ、人間離れした美人であるのには変わりがない。
“悪魔”────···
彼がそう呼ばれるのは、その怪しくも美しい外見からだけでは無い。
────その強さと異常さだ。
最初のコメントを投稿しよう!