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スグリside────────
「坊っ、お、落ち着いて……っ!」
「頼んますっ!、待ってください……!」
俺は時雨のところの顔見知り強面従業員さんの言葉を尽く無視し、以前時雨のお母さんから頂いた『スグリちゃんならいつでも勝手に入っていいからな』とのありがたいお言葉を最大限利用し、今だけは我が物顔でズンズン奥へと進んで行く。
風格ある佇まいの門を堂々と正面から潜り、一昔前の和風豪邸を彷彿とさせる、広い土地に低く贅沢に建てられた平屋へと踏み入り、磨き抜かれツルツルと反射する広い廊下をヒタヒタと歩く。
────俺は今、苦情を言いに時雨の家へ押しかけに来ている。
理由は簡単。理桜に怒られた、なんか拗ねられた。
それも原因は時雨である。間違いない。
脳裏に蘇るのは────…
『ほんっっとにムカつく……っ、兄貴なんかもう知らない!!』
という、まるで鈍器で殴られたかのような衝撃的な言葉。
その後理桜は俺が何度呼び掛けても謝っても、小一時間ぜんっぜん返事してくれなかった。こんな事今まで一度だってなかったのに。
……ちなみに今も尚、理桜は臍を曲げて俺からの連絡をガン無視している。めっちゃ悲しい。
優しい理桜がこんなに怒るなんて俺は弟に一体何をしてしまったんだと頭を抱えた。
普段ブラコンと称される理桜に敵意を向けられるのは殊の外ダメージが大きかったようで、それはそれはショックを受けた。
しかし、こうなった切っ掛けの方は俺自身の行いのせいじゃない事に気が付いたのは理桜のある一言。
『────なんっだよあの写真、っ……あ"ああ腹立つ!あの魔王、次会ったらコ〇ス』
そしてこの魔王とは時雨を指す。
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