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何やら言ってはいけない言葉が聞こえた気がしたが、それは多分気の所為だろうと流し、とにかくお手上げのこの状態をどうにかするべく、聞こえて来た弟の怒りの原因を探る手がかりになるような単語に耳聡く反応し、慌てて問いかけた。 時雨がどうしたんだ、写真ってなんだ、と。 しかし理桜はそんな俺をキッと睨みつけ…… 『そういうトコが馬鹿だって言ってんの!自分に聞けば!?』 と、更なるダメージを与えてくる始末。 本当にどうしたんだ理桜、お兄ちゃん多分今HP赤ゲージだよ。 とはいえ、弟が怒っている原因は全く身に覚えがなく困り果てて黙ってしまえば、不機嫌そうな顔はそのままだったが、理桜は若干バツの悪そうな声でヒントをくれた。 『…………あのムカつく魔王にでも聞けば?……あああ、アイツの携帯ぶっ壊したくなってきた』 いっそ正解をくれと思わないでもなかったが、それでは理桜の気が収まらなかったのだろう。理桜はそれだけ言い残すと、ぷいっとその場を去ってしまった。 それからは知っての通り、連絡もガン無視されているので本当に教えてくれる気は無いらしい。 理桜の不機嫌は長引かせると悪化する。 大慌てでたまり場に行くも、間の悪い事に時雨はおらず、仕方なくメールをするも返信は来ない。何度送ってもそれは変わらず、次第に焦りが滲んで行った。……なぜなら、本来なら即返信してくるはずの理桜にその倍以上は送っているのに一切返信が来なかったから。 その頃には既に冷静さなど何処かに落としてきましたと言わんばかりに焦っていた俺は、普段なら絶対にしない時雨への鬼電後、それでも出ない時雨に痺れを切らし、もしや実家かと上総にメールで聞けばすぐに返信があり、大当たり。……俺がこんなに駆け回ってると言うのに、まさか実家でくつろいでるんじゃないだろうなあの男。 それからは、とにかく勢いに任せて電車に乗り、道中理桜に送った返信のこない虚しいメール分を哀愁漂う眼差しで眺めて落胆し、なにやら理桜の神経を逆撫でたらしい時雨に対し若干の濡れ衣感が否めないが腹を立て、今に至る。
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