悪魔

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俺は一年間も毎日見続けてきたというのに、至近距離の麗人相手に未だたじろいでしまう。……だって緊張するんだ。でもせっかく目が合っているのに視線を逸らすのなんて勿体なくて外せる訳もない。 だって彼は─────··· あぁ……ほら、 「……」 先程まで絡んでいた視線は、呆気なく窓の方へ逸らされてしまった。 クラス連中からは「やっぱダメか」とか「今日は長かったよな」なんて、勝手な落胆の言葉と微妙な励ましを小声で貰った。 でも、俺は『今は気分じゃないだけかもしれない』と、かなり苦し紛れの思考で視線を逸らされてもペラペラと喋り続けた。 つまらなそうな横顔─────。 彼の背丈は170cmも無く、座っているとさらに小さく華奢な印象が強くなる為、この凍えるような威圧感が無ければ彼はチャラ男や変態オヤジの餌食になりそうだ、とくだらないことを考えてしまう。 俺は白瀬さんとは逆で、185cmと背は高い方だ。今だって、正直横顔と言っていいのか迷うほど上から眺めている。 彼の肌の質感はサラサラとして見えて、本当に作り物みたいだ。 普通、油とかでテカらないか……? とか無駄なこと考えている間にも、いい加減話題が無くなってきた。ただでさえ緊張で早口になってて、考えていた話がゴリゴリ減っていってるし…… だから、もうしばらく様子見で話しかけ続けたらまた適当なところで切り上げるか、といつもの如く思考していたのだが…………今日、いつも通りのその後を迎えることは無かった。 ────白瀬さんの視線が、戻ってきたのだ。 俺を見る白瀬さん。 そして、まだ見ていた俺。 お互いずっとそこにいたのに、今しがた鉢合わせたかのように時が止まる。クラス連中も異変に気付き、チラホラ話し声も聞こえ始めていたのが途端、静かになった。 「……」 「し、白瀬さん?」 「…………」 「……どうしたんすか?」 「……………………」 俺は白瀬さんの机の前にしゃがみこむと顔を覗き込んだ。なんとなく顔色がいつもより悪く見えて、心配になる。根気よく待ってみると、漸く口を開いた白瀬さんは………… 「…………お、はよ」 ………… ────────え?
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