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スグリside────────
昼休憩。
底辺校だというのに何故かコンビニのように品揃えの充実した購買に入ると、中でゲラゲラと騒ぎながら商品を物色していた不良がザザザッ!と大袈裟な音と共に撤退し、店内にはがらんと寂しげな空気だけが残った。……そんなに嫌なのか?
……別に、いいけど。
こうも避けられると『これってそもそも俺だけの努力でどうにかなるものなのか?』と疑問になってきて、一気に気分が沈んだ。
……今更、友達とか……もう、遅かったのかな。
普段から続く日常に目を向けてみれば、自分は精神的な平穏からは程遠いところで生活していたのだと、改めて痛感することが多い。……思えば、今までの日常を思い出すだけでも気が滅入る。
……今までの俺は『こちらからは何もしない、何も望まないから。そっちも何もしないで、何も望まないで』と、そんな姿勢で生きてきた。
興味を持っても、どうせそれを手に出来ない自分が分かりきってるから、惨めで悔しくて……手を伸ばせば伸ばすほど、その後が余計寂しくなったから。
……なまじ期待するだけ無駄だと諦めていた。
心が裂かれるのも、もう腹いっぱいだった。
でも────俺は高二で、もうすぐ大人。
いい加減、変わらないといけないのも分かってる。
……はぁ。
今日はぐだぐだとテンションの下がることを考え過ぎた為か、なんだか食欲が出ない。
俺は飲み物と適当につまめるお菓子だけを買うと、校舎の外へ出ることにした。
ピリリリリ、ピリリリリ────
ピリリリリ、ピリリリリ────
…………。
ピリリリリ、ピリリリリ────
ピリ──ピッ……
……執拗い着信を切り、暫く外へ向かって歩いていると珍しく校内に、ブツ────ッという、放送用のマイクの入る音が響いた。
『ぴんぽんぱんぽーん。
あ゙ーあ゙ー、まいくてすと、まいくてすと。
えー、白瀬 スグリくん。2年A組、白瀬 スグリくん。
時雨 影一が呼んでるんで屋上までおこしくださーい
ぴんぽんぱんぽーん』
………………なるほど、嫌がらせか。
この声は川崎先輩の声だ。 ちなみに放送室は1階。……対して呼び出し人が待っている先は屋上。……おい、時雨。まさか3年生をパシらせたのか……?
とても正気じゃない。
ん……?あれ……
放送室は確か、一階にあるんだよな……?じゃあ川崎先輩、何気に俺と近いところにいるってことじゃない?
なら、直で来てくれればよかったのに……放送って目立つし。
なーんて。
俺がここにいることを知らない先輩からしたら、到底無理な要望を心の中で零しながらも、俺はため息をついて方向転換し、屋上への階段を上がっていくのだった。
……当然のごとく我が物顔で放送室を好きにする不良に若干の呆れと恐怖を感じながら。
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