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***
……本日2度目の屋上である。勘弁して欲しい。
「遅せぇよ」
「…………」
まぁ自分の意思じゃないからな、なんて思いつつ、慣れた時雨の不機嫌顔からスっと目を逸らす。
慣れてても怖いんだよ……
なんでピアスも刺青もしちゃってる系The不良な時雨には友達がいるのに、俺には居ないんだ?納得できない。
え、俺の方がまだハードル低くない?
髪も染めてないしもちろん刺青もしてないよ?
まぁ顔はちょっと……いやだいぶアレだろうけど……
いや…………うん、知ってるよ。
わかってるって、違いますね。一番の要因は俺のコミュ二ケーション能力が極めて低いからですよね?うん、知ってる。
ガチャ────···
「お、来たか白瀬」
「…………」
貴方に呼ばれましたからね。
しかも放送で、なんていう苛立ちを含んだ心の声は俺が一瞬、無意識に顔を顰めてしまったのをたまたま目撃した事で察せられたらしく、川崎先輩にはバツの悪そうな顔をされた。
…………。
…………やらせたのは時雨、やらせたのは時雨、やらせたのは時雨。
だから、川崎先輩は悪くない。
若干残っていた顔の強ばりがマシになってから、俺は川崎先輩からも視線を外した。
時雨たちが昼間に集まっている屋上で唯一、日陰が出来る屋根の下。俺は壁際の適当なところに凭れて座り、買った物は隣に置いて目を閉じた。
「……オイ、白瀬。飯は?」
「…………」
……あのさ、なんでわざわざ隣に移動して来る訳?
昼食を食べようとしない俺に何を思ったのか、時雨お得意の尋問が始まった。……勝手に食べたらいいのに。
「飯、買ってねェのか?」
それに俺は頷く。うん、昼食は買ってない。
あぁ、でも……と、俺は律儀にも思い直し、先程購入した飲み物とお菓子を袋から出し、時雨に見せた。昼食じゃないけど買いはしたよ、と。
後でも食べられるやつだし、お腹空いたらツマむから平気だ。
ひとまず、そのような心境で頷いてはみるけど……やはり、そんな無言の訴えでは彼には伝わらない。
「……飯じゃねェ」
「…………」
……え、いや。……うん、知ってる。
「お"い……なんか言えよ」
「……」
う……なら尚更凄むんじゃないよバカ。
あと、せめてその眉間のシワをもう少し薄くしてから言ってくれ。
……俺は誰よりも人の事言えないけど。
「…………」
あー…………っと。
時雨まで黙ってしまった。
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