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笠田side────────
白瀬さんはたくさんあるパンの中からチョコレートのパンを選んだ。意外と可愛らしいチョイスだと思ったがもちろん俺は口に出さなかった。もしこれで地雷を踏み抜いて怒らせでもしたら困る。……殺されるかもしれない。
つい先程────
白瀬さんに断られ、俺が項垂れたのとそれを川崎さんが可哀想だと面白半分に茶化したからか、白瀬さんは昼食にチョコパンを所望してくれた。
……白瀬さんから初めての同情がもらえてちょっと嬉しかったのは内緒だ。なんか女々しい気がする。
そんな間にも、白瀬さんはパンの袋を開け、パクリと口に含んでいた。
しばらく見つめていると、顰められていた顔から不機嫌さがパッと掻き消えた。……やはり無表情のままではあるのだが、いつもより幾分眉間のシワが薄い状態でパクパクと食べ進めていく様に、俺は驚きが隠せなかった。こんな白瀬さん、見たい事ない。
美味しかった……とか?
……いや、そんなわけないか。
白瀬さんは食にも頓着がないって噂だし……とパンを齧りつつじっと見ていると白瀬さんからも視線が向けられ、目が合った。
────今、何を考えているんだろうか?
相変わらず彼の思考は分からない……けど、不味かった訳じゃ無いのは確かだった。
目が合ったのが嬉しくてへらりと笑えば、白瀬さんはこちらにジトっとした視線を寄越しながらもパクり──と、少しだけ不貞腐れたような顔でもう一口食べる。
……やっぱり、意外と美味かったのかな。
しかし、暫くすると、また俺から興味を無くしたように視線を外し、黙々と食事を再開してしまった。
白瀬さんは自分にも興味がないみたいだから気付いてないかもしれないが……彼の少し不服そうにしている顔は、普段よりどこか幼く見えて可愛いと密かに評判だ。
あ……でも、例え白瀬さんが自分のことに興味あったとしても気付かなかったかも。
だって、みんな『白瀬さんにバレた時が怖いから』って、絶対バレないようにしてるから。
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