1821人が本棚に入れています
本棚に追加
本当はいつも弁当なのだが、たまたま今日はうっかり忘れてきてしまった。
だから『せっかく弟が作ってくれたのに……』と、やけ食いする為に購買でパンを沢山買ってきたのだが……弟には悪いが、今日は忘れてきて正解だったと思う。
珍しく昼休憩に白瀬さんが屋上に来てくれたし、成り行きとはいえ俺のパンの中から昼食を選んでくれた。いつもの彼なら時雨さんはまだしも、川崎さんや俺なんかは確実にガン無視を決められていたに違いない。
にしても……今日の白瀬さん、なんかおかしいよなー
俺相手に喋ってくれたしさ……まじ、晩飯は赤飯炊こうかな。
とかくだらない事を考えていると、白瀬さんがふらりと立ち上がった為、俺は首を傾げた。
まだ昼休憩は終わらない。何処へ行くのだろう?
……もう、屋上には飽きたんだろうか。
彼は屋上があまり好きではないようだか────いや……屋上というより、“俺たちが”かもしれないけど。
白瀬さんは、不良じゃない。
けど……白瀬さんは普通の奴らだけでなく、不良にも怖がられてる。それは瞳の色とか物理的な強さ、それからあの無表情にプラスしてほぼ常に纏っている異様な威圧感のせいだ。現に白瀬さんは見た感じ全く不良には見えない。
こんな学校に通ってるのだって、何かの間違いなんじゃないかと思う程、俺たちと違って真っ当に見える。いや、普通に見えるどころか優等生って感じ。
……ただ、かなりクールな方のだけど。
「……る」
……今日の白瀬さんは、なんか少し変だ。
「……あ、げる」
……そりゃ、もちろん……
悪い訳ではなく……良い、方に……
俺は何かを握らされた────しかし、うっかり放心してしまい、漸く我に返れたのは視界の端で白瀬さんが離れていくのを認識してからだった。
────やっぱり、今日の白瀬さんは確実に変だ。
最初のコメントを投稿しよう!