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はぁ……にしても怖かったなぁ。 特にスキンヘッド全剃り眉毛の人…… こうして俺の平穏な高校生活は、強面だが善良な時雨家の顔見知りさんへの情によって、始まらずして終わりを告げたのだ。 絶対また友達できないな、なんて自らの未来を嘆きながら。 そして、現在。 そーだよ、友達なんか出来るわけないだろ!?出来たって自動的に不良だ! ていうか、なんなら不良すらも友達になってくれなかったけどな!! 俺は当時を思い出し、つい心の中で激高する。 案の定、お隣の強面で優しい顔見知りさん達の情に流された結果、ここへ入学してから一年以上経ってなお、俺には一人も友達がいない。それどころか、学校の不良にまで怖がられる始末である。 え……もしかして、俺に普通の友達が出来なかったのって、顔が怖い怖くない以前に不良だと思われてたり……いや、それこそ無いか。 そもそも不良とは素行不良の生徒の事だ。 その場合、俺は間違いなく当てはまっていない筈である。 制服だって学ランの下には指定された暗色のシャツを着ているし、稀に暑かったりで着崩していたとしても常識の範囲内でしかしていない。 うるさくも無いし、喧嘩もしない。 時雨が率いる族に入った覚えも勿論ない。 ただ、『学力の高い部類に入れればサボりは黙認する』と言った、数代前のインテリ番長が作ったという学校も公認のルールがあり、時折それに肖って……ということも無くはないのだが。 そもそも、基本生徒に蹂躙されても面倒だから好きにさせようと呆気なく匙を投げる教師が集まりに集まった、最早取り返しのつかないほど正気の沙汰では無いこの学校の授業など……授業とは名ばかりでほとんどが自習だ。 それでも基本的には出るようにしている俺は、間違いなく善良な生徒と言って遜色無いはずだ。 ────あぁ、この学校ってとりあえずヤバい子供を収容しておくだけの施設なんだなぁと、何度思ったことか。ここに校則は無いのか。 街を歩いていても時雨が敵対しているらしい“月凪学園”の生徒が中心に入っている族……ええと、名前は忘れてしまったが。とにかく、あちらさんから喧嘩を売られるなんて事も今のところ無い。 と、いうことは俺がRed rainに入っているなんて言う誤情報も無い筈である。 なんなら、あちらで俺を見知っている人はこの学校の生徒よりもかなりフレンドリーに話しかけてくれるくらいだ。 ……逆に俺の方が彼らのことを怖いのだが、不良である彼らだからこそ、その辺の一般人よりも諸々耐性があるのか、俺にも友好的に話しかけられるのだろう。 ……もう何も言うまい。 しかし、彼らが他の人たちより好意的に接してくれるのは、ひとえに俺の弟────理桜のお陰だろう。 件の月凪学園には理桜も通っているのだ。更にその理桜があちらの族に入っているが故なのだと思う。だって、今のところ話しかけてくる人は皆、専ら理桜の知り合いだった。 初対面はお約束のように『理桜が言っていた──』という具合いにペラペラと一方的に言いふらした覚えのない自分のエピソードを聞かされるから。 知らない間に自分の話が回っているのには多少思うところもあるが、理桜が上手く話せない俺を気遣ってなにかフォローを入れてくれているのだろう。 その結果、街で会ったら話す程度の知り合いが何人かできたのだ。ゼロどころかプラスである。本当にありがたいし、よく出来た弟である。
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