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あれから暫く。
俺はあの日の翌日から、何度も白瀬を溜まり場へと誘った。
龍心もそうだが、他にも他校生や大学生など、Red rainには白瀬に会いたがってる奴が腐るほど居る。
……ずっと溜まり場で燻ってる幹部らと龍心にくらい、そろそろ会わせてやってもいいだろ。
だが、誘っても誘っても白瀬は来ない。
むしろ日毎に嫌がり方が酷くなる一方だった。
「っ────おい!」
また携帯に意識を持っていかれすぎていたのか、校内の出っ張った壁に衝突しそうになっていた白瀬の腕を引き、足を止めてやる。
「……………………」
「テメェ……気ィ付けろ」
振り返った白瀬は不服そうな顔だったが、小さく頷いた。
少し口を尖らせてんのは『言われなくてもわかってる』とか、そんな所か。
普段なら礼を言ってくる時もある状況。なのに今は、いつもの真顔どころか不機嫌顔だ。
こいつは頭も良くて運動神経も良い。
……が、意外な事に注意散漫らしく、割と頻繁に何かに衝突しそうになっていたりする。
……それは周りに興味が無さすぎるが故なのか、単に画面の文字を読むのに集中しすぎているからなのか。
「はぁ……本ばっか読んでぶつかってる暇があんなら、いい加減溜まり場くらい来ても────」
あ…………
「…………」
クソ……やっちまった。
はぁ……何やってんだよ、また不機嫌にさせちまった。これでまた暫くは過剰に逃げ回られて、話を聞いて貰えないどころか顔を合わせる事も減ってしまった。
白瀬は威圧的な態度や強引な物言いをされた時、特に嫌そうな顔をする。嫌いなんだろう、そういうのが。
しかし、残念な事に俺は元々そういう気質が強く、例え気に入っている白瀬に対しても上手く直せないでいる。つい他の奴らにするみたいに命令口調になっちまう。
ただでさえ最近は、しつこく誘う俺を避けているのか、話に聞く耳も持たなくなっていた。『一年以上会いたがってるやつがいて可哀想だろう』と伝えたいのに、今じゃ話しかけただけでも『お前の話は聞いてられない』とばかりに、早々に逃げられる。
いつにも増して顔を顰められ、逃げられ拒絶されている。
そして俺も、ここの所そんな反応しか見せない白瀬に腹が立ち始めていた。現に今の俺は、笠田の弟の事を盾に白瀬に対し、当てつけのように行動している節がある。
……まぁ、その結果、本当に物理的に逃げ回るようになってしまった訳だが。
それでも俺が白瀬を追い回しているのは『そこまで拒絶しなくてもいいじゃねェか』と腹を立ててと言うのも勿論あるのだが……自分の性質上、逃げられるとむしろ追いかけたくなる作用が働いて引っ込みがつかないのだ。
それに……俺は白瀬の事も好きだが、それとは別の意味でRed rainの奴らの事も好きだ。……流石にあんな風に健気に泣かれると、俺にだってくるものがある。
最悪、いっそ引き摺っていくか……?
何よりあの溜まり場は、一度行けば白瀬だって気に入るはずだ。むしろ今まで知らなかったのが勿体ねぇくらいなのだから。
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