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正面に目を向ければ、相も変わらず白髪美青年の淡い金色と視線が絡む。
初めこそ逸らしがちだったが、ここまであちらの様子を伺う度に目が合う為、俺とて多少の耐性はついてきていた。
しかし……多少とはいえ俺がこんなに初対面の人間に早く慣れられたのは、ひとえに彼が不思議な人だったからだ。
客観的には彼が俺に対し一方的に喋っているように見えるだろうが、俺と彼の中では会話が成立している。
……他に理由をあげるなら、彼が俺に関わる人間の中では酷く珍しい、物腰の柔らかいタイプだったから、と言うくらいだろうか。
……よく目が合うのは笠田と似ているのに、雰囲気なんかはまるっと違うのが少し面白いところだ。
時計を確認すると、現在の時刻は20時────。
……コンビニに寄りたいし、そろそろ帰ろう。
駅近ということもありあのコンビニは24時間営業の為、店が閉まってしまうとか、そういう点に関しては心配する必要は無い。
だが、如何せん明日も学校はある。
……夕食が遅れるのは思ったよりネックなのだ。
カタン──···
「そろそろお帰りですか? では、入口まで送りましょう」
「…………」
立ち上がった俺を見て、続いて立ち上がろうとした彼に首を振って止める。彼は待ち合わせをしているようだし、今日は道案内のお礼に奢ってくれるらしいのだ。
……これ以上至れり尽くせりだと、いっそ恐縮してしまう。
彼は俺をじっと見つめると、眉を下げて頷き、立ち上がる事をやめてくれた。
「そうですか……」
「……」
彼は残念そうに呟くと曖昧に笑った。
う……この人の困ったような笑みって、なんか罪悪感を感じるんだよなぁ。
しかし、俺はそれに頷くと部屋の外へ出るため、彼の座る横を通り過ぎ……ようとした。
「っ────!?」
気付いた時には横から手を取られていた。
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