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unknownside──────── 急いでいる様子は無く、淡々と歩みを進める少年。 スっと背筋が伸ばされた、育ちの良さを感じさせる後ろ姿に惹かれ、その背中を呼び止めた。 「あの、すみません」 理由は単純で、ただ気になったから。 強いて言っても、せいぜい勘と言ったところだ。 多少着古されてはいるが、質のいい焦茶のシャツにボトム。対して、私は白シャツに灰がかったスラックス。偶然にも彼とは色味が正反対の格好だ。 そして、追加で言うなら私と彼は髪色も対照的だった。 黒髪自体はこの国で決して珍しいものではない筈だが、彼の独特な雰囲気や佇まいの為か、それらはどこか他を切り離し浮いているように見えた。 そして、振り返った少年から向けられた、ピリつくような視線。 おや……これはまた…… 鮮血のように深く、それでいて鮮やかに輝く美しい紅玉(こうぎょく)。二つ嵌め込まれたそれは、見ているこちらを魅了し、呆気なく絡め取ってしまいそうだ。 しかし、彼の目には他者を誑し込む人間特有の、ドロドロと纏わりつくような色が見当たらない。……それどころか、むしろ彼の赤い目はこちらを拒絶し、警戒するように眇られており、暖色系の色味のはずが受ける印象は酷く冷たいものだった。 日本人らしからぬ瞳の色と、巧妙に作られた人形の様に整った顔立ちは不機嫌そうに歪められている。 それも、振り返った彼の顔立ちは予想していた東洋然としたものでは無く、凸凹がありながらも幼さを残すもので、言葉にするなら『西洋系人種の子供』と言った表現が一番しっくりくるような顔立ちだった。 意外な容姿に少し驚きつつも、これ以上警戒されぬよう「呼び止めてしまってすみません……」と、私は努めて穏やかに微笑み、謝るのだった。
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