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『ありえないでしょ。こんな嘘に引っ掛かると思ったら大間違い』
なんて思って笑っていた。
ちょっと顔見知りになった年上をからかおうなんて十六歳が考えることよね。
うん?
ちょっと待って?
まだ十五歳という可能性もある。
誕生日が来てないかも。
私を犯罪者にでもするつもりだろうか。
この子は。
冷ややかな目を狼谷君に向けた。
だいたい入学して間もない一年生が同じ年頃の女子、適合者と交流しないで言うことだろうか。
もっと周りを見なさいよと応援するような眼差しを若人に向けた。
「私は誰とも付き合う気はないの。ごめんなさい」
味噌汁を狼谷君のトレイにのせてあげて、きっぱりとお断りしたのだった。
春のうららかなお昼時間。
きっと彼はねぼけていたに違いない。
「はい、次の人ー」
私は彼の表情を見ずに次の人を呼んだ。
今の私にとって大事なのは味噌汁か中華スープかだけだった。
Sクラスの獣人である彼が寮の部屋から遠い一般学生が使う学食にわざわざやってきていることも気にかけていなかった。
私に会いに来ている可能性なんて一ミリも頭の中になかったのだから―――
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