第2話 私の日常

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「そうさ。知らない人が多いだろうけど、私はしっかり覚えているよ。忘れられないくらい酷い有様だったからね。今、入学してきた獅子の父親が在籍した三年間は学園内が地獄のようだったよ」 ごくんっとからあげを飲み込んだ。 働き出して、初めて重々しい空気に触れ、ここが獣人達が集まる特別な場所であることを思い出した。 獣人達の世界は弱肉強食。 強い獣人がトップに立ち、人間の世界とは違う、彼ら独自のルールがあるとか。 「今回は場合によってはもっとひどいことになるかもしれないね。なんせ、狼と鷹、熊に龍、豹がキングになれる器の獣人だからねぇ……」 「彼らを止められる適合者(マリア)がいるといいけどね」 どこから聞いてくるのか、おばちゃん達は情報通だった。 獣人達の上位六名をチェスの駒に例えるのが習わしで、キング、クイーン、ルーク、ビショップ、ナイト、ポーンと生徒達はそう呼ぶ。 チェスの呼び名にランクは関係なく、キングがトップということだけがはっきりしていた。 「でも、さすがに三年生には勝てないでしょ」 けれど、今のところまだその一年生達はただの学生で無名。
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