深夜、あなたの車の中で

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時間が、止まった。 大地さんは目を見開いたまま、動かなくなってしまった。 私もこれ以上何も言えなくなって、視線を落とす。 二人の間に流れるジャズの音が、やけに大きく聞こえた。 やがて、 「はぁぁ…」 長めのため息が聞こえて顔を上げると、大地さんが片手で髪の毛をくしゃっと掴んでいた。 「大地さん?」 ひょっとして、嫌な気持ちにさせてしまったのだろうか。 私と目が合うと、大地さんは気まずそうな表情を見せた。 「いや、女の子の方からこんなこと言わせるなんて、俺、ダサすぎでしょ…」 「?」 首を傾げる私に、大地さんはぶつぶつと続ける。 「ちょっとずつ距離を縮めようとか、まずはいいお兄ちゃんキャラで行こうとか、いろいろ考えてたんだよ、俺も。でも、女々しいよな、そういう計算」 「え?それってどういう…?」 言葉の意味を測りかねていると、大地さんが両手を伸ばしてきた。 がっしりと大きな手で両肩を掴まれて、私の胸がドキドキと高鳴る。 「これからは恋人として甘えてよ、って意味」 大地さんの柔らかな笑顔と声が、身体の中にすうっと入り込んでくる。 私は泣きそうになるのを堪えながら、こくこくと何度も頷いた。 辺りはしんと静かなのに、心は高揚感に包まれる。そんな唯一無二の夜だった。 ずっとこの夜の中にいたかった。 このまま朝が来なければいいのに、と思った。
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