Ⅲ 毒親

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「え…嘘でしょう。」  私は思わず鞄を取り落とす。  そこに、いたのは―― 「こ、これは誤解よ…! 違うの、私は…!」  そこにいたのは、私の母だった。 「どうして!? どうしてお母さんがここにいるの!?」  怒鳴るように、私の声は住宅街に響き渡る。  母は焦ったように言い訳を始める。 「だ、だってあなたが心配だったのよ…! だから…!」 (心配、だった…? わけわかんないんだけど…。)  困惑の中、口を開いたのは驚きにも四音だった。 「嘘は感心しないなぁ。」  そう、のんきな声で言う。 「嘘…? え…?」    私の困惑は深まっていくばかり。何しろ四音の顔が、全てを分かっているような顔だったから。 「な、何を言ってるの?! 私は嘘なんか…」  必死に弁論するが、疑惑は深まるばかりだ。 「わざわざストーカーみたいな真似しなくても、普通に送ればよかったんじゃないの?」  四音は確信に迫るように、言う。 「そうよ…。そうじゃない…! 私お母さんに何度も言ったわ! 夜道が怖いから送ってって! でも、仕事だって言って…。」  後半はもう、何がなんだか分からずで泣いていた。 「ち、違うのよ…!」  私は相変わらず本当の事を言わない母に、怒りが込み上げる。 「何が違うって言うの!? この時間にここにいるってことは仕事の件だって嘘じゃない!」  信じていた母を、信じれなくなって。私は大号泣しながら金切り声を上げる。 「ち、違う…のよ…。」  声の調子も落ちて、もうほとんど反抗する気がないと見られた。  そこで口火を切るのは、またしても四音だ。 「塾に行っているか、確かめたかったんだろう?」    その言葉を聞いた母の顔は、驚きに満ちていた。  当の私は、また謎が増えてしまった。
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