Ⅰ 転校生

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 休み時間。  それは、普通の在校生には至福の時間だろうが、転校生にとってはとても気の毒な物だろう。  案の定、転校生の四音の周りには男女クラス問わず人だかりが出来ていた。  次々と色々な人が様々な質問を藪から棒に投げつける。  それを一つ一つ丁寧に返していく四音がいた。 「ねね! 前の学校ってどんなところだった!?」 「とっても雰囲気の良い所だったよ。少し騒がしい一面もあったけどね。」 「家はどこなの!?」 「学校から徒歩5分圏内さ。近いものだよ。」 「そういえばさ、男子なのか!? 女子なのか!?」 「ご想像にお任せしようかな。」 「可愛い名前だね~。」 「ありがとう。結構気に入ってるんだ。」  そんなデリカシーの欠片もない質問にも淡々と答える。  そして、様々な質問の合間を縫って、一つの質問がとある生徒から投げかけられた。 「バイトとかしてるの?」  そんなありきたりな質問に、少々の間を開けて、微笑しながら答えた。 「しているよ。親のしている仕事を手伝っているんだ。何でも屋、と言ったら分かりやすいかな?」  聞きなれない単語で、質問の嵐は一瞬にして止む。    そして次に来るのは、疑問の声。    生徒たちが何でも屋のとは何かについて質問する前に、チャイムが鳴り響く。  先生も教室へ入って来る。    生徒たちは多少の疑問を頭に残しながら席へつくのだった。
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