Ⅱ ストーカー

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(何なのよ…! 誰なのよ…! やめてよ、ついてこないで…!)  苛立ちと焦りと怖さで、私は思わず振り向く。望んでもいないはずの行動なのに、したくないはずなのにしてしまう。  誰も、いない。  足音も、聞こえない。  誰もいないのが、この際結果として一番いいはずなのに、私の目には涙が浮かんでいた。  先ほどの感情に、悲しみが追加される。  人は、多くの感情を一度に発揮すると、耐えられなくなって爆発してしまうのではないか。    私は、耐えられなくなって爆発するように、走り出す。  無論、足音もそれと同じように走る。  今度は、後ろに気配まで感じる。 「いやぁっ! ついて、こないで!」  静かな住宅街に、場違いの大声が響く。  しかし、尚も私を襲うのは足音と気配。  私の静止は、聞いてもらえない。  私はひたすらに、家に向かうことだけを考えていた。  前方、もうそこには家がある。  暖かな色味を帯びた光が、近づく。 (家についてしまえば、もう追われる心配はないのよ…! 早く、早くしなくちゃ…!)  気持ちも体も焦りで満ち足りている。    でも、気持ちとは裏腹に削られる体力。  そろそろ限界を迎え始めている。  息も絶え絶え、走るスピードも徐々に落ちていく。  それでも、私は死ぬ気で走った。  走って、走って走って走って―― (ついた…!)  敷地内に入った私は、急いでオートロックの鍵を開け、マンション内へ入っていく。    
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