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Ⅲ 毒親
思わず心が砕けそうになった時、四音は言う。
「…問題は、ないよ。」
(了承してくれた…!)
ただ、即答でないのが気掛かりだが。
私は今まで俯いていた顔を上げて、喜びを表現する。
「本当!? ありがとう…!」
お礼を述べると、四音も嬉しそうに微笑む。
それから、私はここではなんだ、と四音と共に教室に入る。
電気も付けずに、適当な椅子に向かい合うように座る。
「それじゃあ、頼みたいこと、聞くよ?」
そう言って笑った四音は、美しいけどどこか気をつかったような笑いだった。
私は、深呼吸をしてから例のストーカーの件について話す。
「そっか…。それは大変だったね。」
同情の言葉。こんなのは何度も聞いた。
私が欲しいのは、その言葉じゃない。
「分かったよ。その依頼、ボクが引き受けよう。」
頼もしそうに、しかしあっさりと引き受けて貰ってしまった。
私が一番求めていた返事なのに、驚いてしまう。
「良いの…?」
思わず聞く。
四音はきょとん、とした顔で告げる。
「もちろんさ。ただ、ボクとしても、その…商売でやっているからね。見合う対価は頂くことになるけど…。」
申し訳なさそうに、対価の話をする。
中々生々しい話だが、聞いてみる。
「その、お金ってどのくらいかかる…?」
一泊置いて、四音が答える。
「うちは結構高く付くんだ。だから、ボクはお金の払えない人には、物々交換で対価を貰っている。」
物々交換…! 今どき古風でやっているところなんて見たことはないが、これはかなりラッキーだ。
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