Ⅲ 毒親

2/7
前へ
/37ページ
次へ
「じゃあ、私もそうしようかな! でも、何をあげたらいいのか分からないけど…。私高価な物なんて親に持たせてもらえないから…。」  交換する物がなければ、意味がない。  すると、紫音はふと私を上から下まで眺め出した。 (物々交換する物を決めてるの…? でも、高価な物なんてないのに…。)  暫くの沈黙の末、四音は口を開く。 「じゃあ、ボクはこれを貰おうかな。」  そう言って指を差した先にあるのは、私が腕につけていたブレスレットだった。  私は思わず隠す。 「ご、ごめん! これは、駄目…。」  これは、駄目だ。  私が、何よりも大事にしているもの。  このブレスレットは貰い物だった。  大切な人から、貰ったものだった。  しかし、四音も引く気はないようだ。 「でも、そうすると依頼は受けられなくなっちゃうかな…。」 (そんなにこれが欲しいの…? これだって、確かに私が大切にしているものだけど、高価じゃないわ。)  でも、私だってこれは渡せない。 「その、他の物じゃ駄目なの?」  四音は、苦笑しながら頷く。  しかし、理由は言わない。触れて欲しくないところなのか、よく分からないが、私もその話に関与してはいけない気がした。  
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加