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「恋人が欲しい…」
私の一日はこの一言から始まる。朝起きた時や友達と話す時など、ことある事に言っている気がする。何故ここまで恋に執着するのかと言えば、幼い頃に読んだ童話が原因だろう。他にも中学生の頃にハマった百合漫画やBL漫画の影響もあるのだろうが、私の恋に対する欲求の根幹はあの童話のような恋をしてみたいという憧れであるといえる。
目が覚めてから暫く思考に浸っていたが、「お姉ちゃん、起きてー!」
というそれはとてもとても可愛らしい声で我に返り、食事をとるためリビングへ向かう。リビングに着くと朝ご飯のいい香りが漂ってくる。余計にお腹が減ってきて、すぐにでも食べたくなってくるが今は我慢をして親と妹に挨拶をする。
「ママ、いーちゃん。おはよう」
挨拶を済ませ、自分の席に座る。だがまだ食べるのは我慢だ。我が家はご飯は必ず全員で食べるというルールがあり、まだ母が席に座ってないため食べる事が出来ない。暫くすると母も席に座り、全員で「いただきます」と挨拶をしてご飯を食べ始めた。基本私達は食事中に喋ることはなく黙々と箸を進める。
だが、偶に…
「お姉ちゃんって、いつも恋人が欲しいって言ってるよね〜、そんなに恋人欲しいの?」
と、可愛い可愛い妹が呆れたように私に質問してくる。ちょっとジト目なのが興h…私の心を更に抉ってくる。自分から恋人が欲しいと言うのであればなんの問題も無いのだが、他人から言われるとどうしてもいい気分にはならない。面倒な奴だなと思われるかも知れないがそれ程真剣なのだ。…でもいーちゃんに言われたらちょっと嬉しいかも。
…さて!ご飯も食べ終わり、学校の準備も終わったので後は学校に行くだけだ。持ち物と身だしなみを確認し、母に行ってきますと挨拶をし家を出る。
私の家は運良く学校の近くのため、徒歩五分ほどで到着する。…後1年でまたこの通学路ともお別れかぁ。そう思うとこの通学路にも愛着を持っている事を
自覚する。…そんなことを考えているうちに学校に着いたようだ。校門は新入生で埋め尽くされており、校門のすぐそこには満開の桜が咲いている。その桜は新入生の新たな門出を祝うかのように桜吹雪が舞わせ、その場に居る人を魅了した。美しい光景に目を奪われてしまっていたが、そろそろ行かないと遅刻になってしまうため、急いで教室へ向かう。私は、夢と希望を持って高校生最後の年を歩み始めた。主に恋人が出来ることを願って…
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