青春《日常》

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「恋人が欲しい...」 私の学校生活もこの一言から始まる。前にも話したが、事ある毎にそう言っている。その為、周りからは「また言ってるよ…」と心の声がダダ漏れな視線を私に向けてくる。私だって言い過ぎだとは思うけど、本当なのだから仕方ない。自分で言う分には構わないのだが、他人に言われるとどうもいい気がしない、面倒な女だなと我ながら思う。 「おはようございます、皆さん席に付きましたね?」  思考の沼に浸っていると、教室の扉がガラガラと音を立てながら開かれ引っ張り出された。教室に入ってきたのは顔立ちが整った30代くらいの男性。安達康裕先生だ。教室には黄色い歓声が湧き上がる。それもそのはず、安達先生は容姿端麗文武両道誰にでも礼儀優しく正しく接するなどあげたらきりがないほどの高スペックで、乙女ゲームのキャラかな?と思ってしまう。かくいう私も叫んだ一人である。  ちなみに、この高校は珍しく毎年クラス替えがあるのだ。しかも、当日になるまで担任がわからないという。男子は美女、女子はイケメンの先生が来ることを天に祈りクラス替えに望むのだ。故に、ここまで大きい歓声が上がったのである。  女子が歓声を上げたのに対して男子の反応は絶望である。恐らく、安達先生が高スペック過ぎて自分に彼女が出来る確率が無くなったと思っているのかも知れない。ごく僅かの男子は歓声を上げていたのだが…もしかして…ゴホン。まあ兎も角(?)安達先生は推しや目の保養として見ている女子が殆どであり、推しと異性として好きな人というのは全く別なため男子諸君には安心してほしい。 「改めまして、おはようございます。3年A組の担任になった安達です。」  そう言うと安達先生はこちらに向かってイケメンスマイルを振りまいてきた。多くの女子がその笑顔にやられたようで中には気絶した子もいるほどだ。男子はその光景を見て負けた気分になっているのか、イケメンって良いよなーといった声が聞こえるてくる。だから推しと好きな人は違うって!!  いや、女子にああいう反応をされたいっていう事もあり得るが…まあ良いか。取り敢えず気絶した隣の子を起こすことにする。肩を揺すって見ると 「はっ!わたしさっきまで何してたっけ?」  取り敢えず起きたので一安心。 「安達先生のイケメンスマイルで気絶してたよ?」 「そうだったんだ!起こしてくれてありがとね!」  そう言うと彼女は私に向かって眩しい笑顔を向けてくる。笑顔が可愛すぎて思わずお持ち帰りしたくなったが理性を働かせなんとか落ち着くことができた。 「うん、どういたしまして」  彼女は中山絵里ちゃん。私の席の隣の子で、笑顔がとても可愛い(重要)子だ。148センチと小柄で思わず抱きしめたくなる可愛さを持っている他ちょっとドジっ子な所があったりと可愛いを詰め込んだような子なのである(興奮) 特に男子にはモテモテだ。男子はこういう子が好きなのか…と思わず決めつけてしまいそうになるほどに。そんなことを考えていると 「えっと…皆さん、もう大丈夫ですか?」  安達先生は困った様子でこちらに聞いてきた。どうやら落ち着くまで待ってくれていたらしい。なんて優しいのかしら…!と普段使わない様な言葉遣いになりそうなほどイケメンが魅せる優しさというのは破壊力抜群だった。申し訳ないが、イケメンではない人からやられても待ってくれるんだ、優しいなーくらいだっただろう。教室の皆が大丈夫です!と言っているため安達先生はSHR(ショートホームルーム)を始めた。    私自身元々学校は楽しいと思っていたが、安達先生や絵里ちゃん、他の皆のお陰でもっと楽しくなりそう!と期待せずにはいられなかった。
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