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這うようにして近づく女を、店主はただ見下ろしている。
「返して、私の夫を!ここに匿ってるんでしょう。あの女のところにはいない。実家にもいない。行くところなんてないのよ、他には!」
女が立ち上がり店主に詰め寄ろうとするが、途中でよろけてひざまづき、再び畳に手をついて項垂れた。女はうずくまり畳に顔を伏せ嗚咽を漏らした。
店主は座して動かない。
女はひとしきり泣き、喚き、やがて静かになった。
老婆が茶を持ち現れる。
すうっと流れるような動作で女の後ろにある茶碗を下げ、熱い茶を満たしたそれを置き、また音もなく出て行った。
「お茶でも」
女は毒気を抜かれたように顔を上げた。背後にある茶碗を振り返る。
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