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「ちょっと待ってよ!誠さんでしょ!?」
「はあ?他人の空似だよ!」
「手の甲の黒子……やっぱり、間違いない!!」
「……」
私の勘違いではないと言わんばかりに、彼の左手を掴んで甲にある黒子を指し示す。
こんなところに黒子があるなんて珍しいでしょ?と。
そう得意げに話してくれたのは、何を隠そう彼自身なのだから。
「ねえ、田舎に帰ったんじゃなかったの……?それに、この女の人は誰?」
何か事情があるのかもしれない。
アウトローな裏社会の陰謀に巻き込まれた説も否めないので、責めるつもりではなく確認するために訊いてみる。
すると私の質問に答えてくれたのは彼……ではなく彼女。
私を完全に敵認定して、強めの口調でつっかかってくる。
「あなたこそ、人の彼氏に何か用でもあるの?」
「彼氏って……この人は、私とお付き合いしていたんです!!」
しかし、私も思ったことは臆せず口にしてしまう性格だ。
きっぱりと言い切ると、彼女は何かを悟ったかのように、ちらりと彼にアイコンタクトをする。
「……亨、あんたまたやったの?」
「何のこと?」
「こんな純情そうなお嬢さんにまで手を出したの?」
「だから、人違いだって」
この状況を把握していないのは私だけで、二人にとっては暗黙の了解なのか、ニヤニヤしながら軽い口調で会話を続ける。
まるで、私の反応を楽しんでいるかのように。
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