949人が本棚に入れています
本棚に追加
東京から約2時間の、とある田舎町。
ハイシーズンになればそれなりに観光客が見込めるビーチや、家族連れがそれなりに集うキャンプ施設のある自然公園も、少し足を延ばせばある。
けれども、都会の生活に染まっていた身としては、ちょっぴり物足りない。
前に帰ってきたのは年末年始だから、3ケ月くらい前だろうか。
駅前の様子は全く変わっていない。むしろ、私が子供の頃からほとんど変わっていない。
この選択は本当に正しかったのかと、今更ながら疑問を抱き始めていると、駅前の交差点から1台の軽自動車が入ってくる。
少し離れたところに駐停車した水色の車をぼんやりと眺めていると、その中からよく知る人物が現れた。
「くるみ、こっち!」
私の名前を呼び、手を振ってくるのは小学校からの同級生で親友の内海 和(マドカ)。
私と違って、この街でずっと暮らしている。
年末に会ったときには髪は胸元くらいのロングで、アッシュ系のヘアカラーをしていたのに、今日はボブカットに大人しめの髪色になっている。
和は4月から公務員で役所の勤務になるから、多分それに合わせてのことだけれど。
「ごめんね、迎えに来てもらって」
「いいよ。仕事が始まるまでは、暇にしていたし」
そう言って、私の少ない荷物を後部席へと置いてくれる。
ちなみに必要な荷物は、午前中に依頼してに運んでもらったから、もうすぐ家に届くはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!