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「しかも、農場を経営している小岩井さんなんて、そんなの絶対に偽名じゃん!」
「……」
「住所も電話もでたらめだったんでしょ?」
「うん。電話してみたら、山川さんっていう老夫婦の御宅に繋がったよ」
あの後、彼が教えてくれた実家の連絡先に電話を掛けてみると、山川さんという全く知らない老夫婦の御自宅に繋がった。
勿論、彼とは無関係だ。
住所を検索してみると、マップの中心は謎の林道のあたりを指し示して、一軒家があるような場所では到底なかった。
今まで色んな男性と付き合ってきたけれど、どれも1ケ月にも満たない短い交際期間だったのでダメージはあまり受けずに済んでいた。
しかし、今回は2年も付き合った上で、こんなに酷い目に遭ったのだ。
当分、恋愛は無理かもしれない……。
まあ、この街で素敵な出会いなんて期待もしていないけれど。
「くるみは簡単に人のこと信用しすぎるの。純真なのはいいけれど、もう少し慎重になりなさいよ」
「うん、そうだね……」
激しい競争を勝ち抜いて、この街の公務員になれた和の言葉には、妙に説得力がある。
昔から、私にとって和は頼れるお姉さんのような存在だ。
呆れられることも多いけれど、私のことを心配してくれているのも分かっている。
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