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「ねえ、くるみ」
「ん?」
「これからどうするの?」
その問いかけに、私はなるべく心配させないようにら気丈に振舞ってみせる。
先のことは全くノープランだけれど、少なくとも実家にいる限り、衣食住に困ることはないから。
「……暫くは、家事手伝ってところかな。適当にバイトでも探すつもり」
今回、降りかかった不運の数々は、流石に同情してもらえたけれど、口煩い母がいつまでも何もしないことを許してくれるはずがない。
ある程度の生活費は入れないといけないだろうし、私だって自由に使えるくらいのお小遣いは欲しい。
でも、この街で条件のいいバイト先を見つけるのは、なかなか至難の業かもしれない。
バイトの求人自体が少ないので、争奪戦が繰り広げられるのが目に見えている。
「あのさ、この間まで和がバイトしていたわらび餅屋さんって、今も求人しているかな?」
「あ……新しい人、もう見つかったみたい」
「そっか。一足、遅かったかぁ……」
和が大学時代にバイトをしていたのは、雑誌で取り上げられたこともある、この辺では有名なわらび餅屋さんだ。
可愛らしい店内と、見た目にも映える器を使用した、自家製の絶品のわらび餅。
余ったものを貰えることもあり、働けたら良いなと思ったけれど、やはり世の中そう甘くはない。
この街で仕事を探すのは難しそうだと匙を投げかけた私に、和は閃いたかのように明るい声を上げる。
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