Act1.時給920円から始まる恋

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「あっ……宝町東の交差点のところのコンビニ、確か求人していたよ」 宝町東の交差点……。 他の地域ではあまり見かけない、マイナーなコンビニチェーン店『サニーマーケット』か。 近くの高校に通っていたので、学生の頃はたまに利用していたけれど、ここ最近は用事がないので近づくこともない。 確か、あのコンビニは……… 「えー、やだよ。篤がバイトしているコンビニでしょ?」 「そうだったっけ?」 「うん。あいつに仕事を教わるなんて、想像するだけでも無理だわ」 「そりゃそうだ」 大学の頃はカフェでバイトしていたので接客は得意だけれど、コンビニの仕事ってやることが多くて意外と大変そうだ。 それに、こっちに戻ってきたとき、偶然会った篤から愚痴のような苦労話を聞いたことがある。 時給は安くて仕事が多い上に、店長がとても厳しい人だと。 ちなみに篤は小中高の同級生で、私の幼馴染でもある。 「……サニマはパスかな」 「私も探してみるよ。良さげな求人があったらすぐ知らせる」 「ありがとう、助かるよ」 私の反応が微妙だと気づき、和は気を取り直して笑顔で言ってくれる。 そして無職の私のために、お茶代までご馳走してくれた。 いつか、恩返しをできればいいのだけれど……。
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