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みどりやが閉まる午後5時まで、存分に語り尽くした私たち。
まだまだ喋りたい気分だったけれど、顔見知りのマスターに、遠回しに店からの撤退を促されてしまった。
それに、暇な私とは違い、和は明日が仕事始めなので、いつまでも引き留めるわけにはいかない。
このまま自宅まで直行だと思いきや、車のエンジンを掛けた和は、私に訊いてくる。
「ねえ、くるみの家に行く前に、コンビニ寄ってもいい?」
「交差点の?いいけど、何か買い物?」
明日の昼御飯でも買うのかな?
そこまで興味がないのに、何となく口にしてしまった質問に、和はきちんと答えてくれる。
いかにも、律儀な彼女らしい。
「うん。豆腐と舞茸」
「舞茸って、そんなのコンビニに置いてあるの?」
「まあね。あそこのコンビニ、何気に品揃えが凄いからね。焼きたてのパンとかもあるし」
「へえ……そうなんだ」
駅前のスーパーに寄った方が、値段も安くて種類も豊富で絶対に良いのに……。
でも、和がそれで構わないのなら、口出しをするつもりはない。
宝町東の交差点は、ここから3つ目の信号だ。
距離にして1キロもないから、3分ほどで到着する。
しかも交差点までの信号は全て点滅信号なので、車は一度も停止することなく、瞬く間に目的地に到着した。
「すぐ済むから、くるみはここで待っていてくれる?」
「うん、分かった」
私に気を遣ったのか、そう言って和は車を降りた。
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