Act1.時給920円から始まる恋

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みどりやが閉まる午後5時まで、存分に語り尽くした私たち。 まだまだ喋りたい気分だったけれど、顔見知りのマスターに、遠回しに店からの撤退を促されてしまった。 それに、暇な私とは違い、和は明日が仕事始めなので、いつまでも引き留めるわけにはいかない。 このまま自宅まで直行だと思いきや、車のエンジンを掛けた和は、私に訊いてくる。 「ねえ、くるみの家に行く前に、コンビニ寄ってもいい?」 「交差点の?いいけど、何か買い物?」 明日の昼御飯でも買うのかな? そこまで興味がないのに、何となく口にしてしまった質問に、和はきちんと答えてくれる。 いかにも、律儀な彼女らしい。 「うん。豆腐と舞茸」 「舞茸って、そんなのコンビニに置いてあるの?」 「まあね。あそこのコンビニ、何気に品揃えが凄いからね。焼きたてのパンとかもあるし」 「へえ……そうなんだ」 駅前のスーパーに寄った方が、値段も安くて種類も豊富で絶対に良いのに……。 でも、和がそれで構わないのなら、口出しをするつもりはない。 宝町東の交差点は、ここから3つ目の信号だ。 距離にして1キロもないから、3分ほどで到着する。 しかも交差点までの信号は全て点滅信号なので、車は一度も停止することなく、瞬く間に目的地に到着した。 「すぐ済むから、くるみはここで待っていてくれる?」 「うん、分かった」 私に気を遣ったのか、そう言って和は車を降りた。
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