Act1.時給920円から始まる恋

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平日の夕方、広い敷地の駐車場には、車が多く停まっている。 都会だと近隣に何軒もコンビニがあるけれど、この周辺には他にないから、利用するお客さんが多いのだろう。 ひっきりなしに出入りする人の流れを、ぼんやりと眺めていると、店員と思われる男性が清掃道具を持って中から出てくる。 かなり強面でいかつく、本業はスナイパーだと言われても違和感がない。 このコンビニ、大丈夫なの……!? しかし私の心配をよそに、そのスナイパーは手慣れた様子で掃き掃除を始め、地面にへばりついたガムを剥がし、ごみ箱の袋を交換する。 その見事な仕事ぶりは、只者ではない……。 無駄のない動きを夢中になって観察していると、買い物を終えた和が戻ってきた。 「お待たせ。何、見てんの?」 「実は今ね……」 スナイパーのことを嬉々として話そうとした私の視界に、見慣れた顔が入ってくる。 和の背後から、ニヤニヤしながら登場した彼は、篤(あつし)といって小中高の同級生であり、なおかつ私にとっては幼馴染でもある。 「よう!くるみ!」 「げっ……篤」 「何だよ、その微妙な反応は」 篤とは、男女の垣根を越えた熱い友情や、少女漫画のような胸キュンな恋模様はなく、腐れ縁という名に相応しい間柄だ。 だから、こういう反応をしたくなるのも無理はない。
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