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すると、篤は何故か後部席へと乗車する。
たまたまバイトの上り時間と重なったのか、一緒に家まで送ってもらおうという魂胆なのだろう。
「で、お前はこんな時期に、何しに戻ってきたわけ?」
「それは……」
本当のことを話したら、馬鹿にされるのが見えている。
でも、嘘を吐くのはどうも苦手で、上手く誤魔化せられる気がしない。
返答に困っていると、篤は何かを察したようで、ニヤリと含み笑いをした。
「さては、お前……男に振られたな?」
「……」
悔しいけれど、何も言い返すことができない。
これが、振られただけの失恋であれば、今でも私は感傷に浸っていたかもしれない。
けれども、流石にあんな仕打ちをされてしまえば、愛情は一瞬にして憎しみへと変わるというものだ。
「図星かよ。そのわりに、意外と落ち込んでいないのな」
「まあね。千年の恋も一時に冷めるってやつだよ」
「それをいうなら百年な」
篤の助言も耳をすり抜け、自分の浅はかさに溜息が出そうになる。
私はどうして、あんな男に2年間も費やしてしまったのか……。
2年前にタイムスリップして、彼の罠に嵌められようとしている自分を全力で救いたい。
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